デ・ハビランド ジプシー

デ・ハビランド ジプシーエンジンの詳細

デ・ハビランド ジプシー（De Havilland Gipsy）は、1927年にフランク・ハルフォードにより設計された航空機用の空冷直列4気筒エンジンです。このエンジンは、デ・ハビランド DH.60 モスに搭載されていたADC シーラスエンジンの代替として開発されました。最初は排気量5リットルの正立直列5気筒エンジンとして設計されましたが、のちに改良が加えられ、出力が増強された倒立エンジンが開発されました。

ジプシーの役割と重要性

ジプシーは戦間期を代表する軽航空機のエンジンであり、第二次世界大戦後も英国および米国の軽飛行機、練習機、連絡機、エアタクシーなどに広く使用されました。このエンジンはデ・ハビランド・エアクラフトがその後の軽飛行機とエンジンのメーカーとして発展する土台を築くうえで重要な役割を果たしました。今日でも、ヴィンテージ軽飛行機のエンジンとしてジプシーは稼働しています。

設計と開発の背景

デ・ハビランドのジェフリー・デ・ハビランドとエンジン設計者フランク・ハルフォードは、ADC シーラスの成功を受けて新しいエンジンの開発に着手しました。1925年、ハルフォードは第一次世界大戦で使用される240 hpの空冷V型8気筒ルノー8Gエンジンを基に、重量と出力が半分になるような4気筒エンジンの設計を開始しました。これにより、信頼性が高く経済的なエンジンが生まれました。

ジプシーのエンジン仕様

ジプシーは空冷直列4気筒エンジンで、重量は約300ポンド（約140kg）、定格出力は2,100rpm時に98 hp（約74 kW）、排気量は5.23リットル（319 cu in）です。その後改良型のジプシーIIは、出力を120 hp（約89 kW）に引き上げられ、共にDH.60G ジプシー・モスと呼ばれました。ジプシーは特性が素直でメンテナンスも簡単なため、信頼性の高いエンジンとして支持されました。

ジプシー・メジャーの登場

ジプシーエンジンの構造的な欠点として、正立エンジンのためにシリンダーがパイロットの視界を妨げていた点があります。そこで、ハルフォードはジプシーを倒立させる決定を下し、エンジンの改善を行いました。この改良により新型ジプシーIIIが開発され、名称もジプシー・メジャーに発展しました。

技術的改良と成果

デ・ハビランド・エアクラフトはジプシーエンジンを用いて新たなスポーツ航空機の生産に取り組み、多くの軽飛行機でそのエンジンが採用されました。中でも、DH.82 タイガー・モスは、多くのパイロットを育てた練習機として名を馳せました。

ジプシーエンジンの派生型

1. ジプシーI: 最初の量産モデルで、1,445基生産。
2. ジプシーII: ストロークを延長し、出力120hpを実現。
3. ジプシーIII: 倒立エンジン化されたモデル。
4. ジプシーIV: 小型軽量スポーツ機向け。
5. ジプシー・メジャー: 改良型で、出力は最大145hpまで向上。
6. ジプシーR: DH.71に搭載されたレース用エンジン。

現状と保存

2010年10月時点で、イギリスにはジプシーエンジンを搭載したDH.60が約17機登録されていますが、それらすべてが飛行可能ではありません。また、各地の航空 Museumsやコレクションにおいてもジプシー関連のエンジンが展示されているため、今もその歴史を語り継いでいます。

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