デ・ハビランド ベノム

デ・ハビランド DH.112 ベノムについて

デ・ハビランド DH.112 ベノムは、イギリスの航空機メーカーであるデ・ハビランド社が開発したジェット戦闘機で、世界中の航空軍に採用されました。この機体は、名前が示す通り「毒液」や「悪意」という意味を持つ"ベノム"（またはヴェノム）という名称が付けられています。

開発の経緯と特長

ベノムは、デ・ハビランド社の前のモデル「バンパイア」の改良型として開発されました。初めはバンパイア FB.8の名称で知られていましたが、開発が進むにつれ、多くの改良点が追加されたため、ベノムという新しい名前が付けられました。前作の双ブーム形式のデザインを踏襲しつつも、エンジンは強力なデ・ハビランド ゴーストに換装され、主翼のデザインも変更されました。主翼の前縁には17度の後退角がつけられ、翼端には追加的な航続距離を確保するための増槽が設けられています。

1949年9月2日に初飛行すると、バンパイアに比べて高度な速度性能を示しました。その結果、イギリス空軍に採用され、1952年から部隊へ配備が始まりました。ベノムは運動性や上昇性能に優れ、機体の強度も高いため、バンパイアの後継として戦闘爆撃機としての役割を果たしました。

ベノムは、特に高高度での運動性が優れており、同時期のF-86 セイバーといった後退翼機と比べてもパフォーマンスに優れています。しかしながら、初期のモデルには機体構造上の問題点が存在していたため、後の改良版では射出座席や空調設備が追加され、油圧式エルロンも導入されました。

1950年には、フランスがアメリカのF-84 サンダージェットとともにNATO標準戦闘機の案を提案しました。この計画は、イギリスが主導し、イギリス・フランス・イタリアで2000機以上の生産を目指しましたが、戦後の産業力不足により実現しませんでした。

メントされなかったものの、ベノムはイギリス空軍のみならず、バンパイアを使用していた他国にも採用され、計1100機以上が生産されました。また、スイスではライセンス生産が行われ、ホーカー ハンターの就役が遅れたため、イギリス空軍は1962年まで運用を続けました。この時点でも、戦闘爆撃機としてのパフォーマンスは優れたものでした。

夜間戦闘機型 & シーベノム

ベノムには、バンパイアと同様に夜間戦闘機型も存在しました。このモデルは、機首にレーダーを搭載し、並列複座のコクピットを採用していました。1950年8月に初飛行し、最初の夜間戦闘機型であるNF.2は1953年から配備が始まりましたが、トラブルも多く、完全な配備は1955年になってからでした。

一方、イギリス海軍ではベノムを艦上戦闘爆撃機としては採用せず、全天候艦上戦闘機型であるシーベノム（Sea Venom）が開発されました。この機体は、ベノム NF.2を基に進化し、レーダーや並列複座コックピット、折りたたみ可能な主翼など、空母運用に必要な改良が行われました。シーベノムは1954年から部隊に配備され、1961年まで運用されました。

仕様と生産型

- FB.1: 戦闘爆撃機型、エンジンはゴースト Mk.103
- NF.2: 夜間戦闘機型
- NF.3: NF.2の改良型、エンジンはゴースト Mk.104
- FB.4: FB.1の改良型、射出座席を装備
- FAW.21: シーベノムの改良型、射出座席装備

主要スペック（FB.4）

• - 全幅: 12.7m
• - 全長: 10.06m
• - 総重量: 6,950kg
• - 最大速度: 961km/h
• - 航続距離: 約1,100km

武装

• - 20 mm イスパノ Mk V 機関砲 × 4門 (150発)
• - RP-3ロケット弾×8発 または 453kg爆弾×2発

ベノムは、その高性能型として多くの航空機に影響を与え、戦闘爆撃機としての重要な役割を果たしました。

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