デ・リーズル カービン

デ・リーズル カービン：影の暗殺者―第二次世界大戦の隠密兵器

デ・リーズル カービンは、第二次世界大戦中の1943年、イギリスで誕生したボルトアクション式の特殊作戦用消音ライフルです。その最大の特徴は、一体型の消音器を備えている点にあります。この革新的な設計は、敵に気づかれることなく任務を遂行するという、特殊部隊にとって極めて重要な要件を満たすものでした。本稿では、その設計から運用、そして戦後までを網羅し、デ・リーズル カービンの全貌に迫ります。

隠密性の追求：設計と開発

デ・リーズル カービンの開発には、ウィリアム・ゴドフリー・デ・リーズルという技師の創意工夫が凝縮されています。彼は元々、自身の趣味である狩猟のために消音銃を開発しており、その技術が軍用兵器へと転用されたのです。陸軍少佐であるマルコム・キャンベルとの出会いが、この兵器の誕生を大きく後押ししました。

当初、9mm弾を使用する計画でしたが、初速が速すぎて消音効果が不十分であることが判明。そこで、威力と消音性を両立できる.45ACP弾を採用するという、画期的な発想が生まれました。この弾薬は、既にイギリス軍で採用されていたため、調達面でも有利でした。

試作段階では、リー・エンフィールド小銃の機関部とトンプソン・サブマシンガンの銃身を組み合わせるという、既存部品の巧みな活用が行われました。1942年には最初の試作品が完成し、兵器委員会に提出。官僚主義的な手続きを避け、迅速な生産が承認されたことは特筆に値します。

1943年には、フォード社の工場で17丁のカービンが生産されました。この際、No.1 MkIIIライフルの不良品を流用するなど、生産コストを抑える工夫もみられます。銃身はトンプソン・サブマシンガンのものを改造し、ボルトや排莢器も.45ACP弾に対応するように変更されました。そして何よりも特徴的なのが、長さ約15インチ、直径2インチの消音器です。これは膨張室と多数のバッフルによって、発射時の音を効果的に低減する設計となっていました。

静寂の性能：試験と評価

フォード製のカービンは、兵器委員会による厳格な試験を受けました。その結果、銃声の小ささと発射炎の無さ、そしてボルトアクション方式ならではの射撃時の静寂性が評価され、既存の消音銃を凌駕する性能を持つことが証明されました。

1944年には、500丁の製造契約が締結され、スターリング・アーマメンツ社が生産を担当しました。この際、木製銃床の標準モデルに加え、空挺部隊向けの折り畳み式銃床モデルも開発されました。設計はフォード製のモデルを基に改良が加えられ、アルミニウム製の消音器や木製フォアアームなどが採用されました。

様々な試験の結果、デ・リーズル カービンの騒音レベルは85.5dBと非常に低い数値を示しました。これは同時代の消音銃と比較しても圧倒的に静かであり、その高い消音性能は、多くの関係者を驚かせました。

戦場での影：運用とその後

デ・リーズル カービンは、[ノルマンディー上陸作戦]]や太平洋戦線など、様々な作戦で投入されました。ブリティッシュ・コマンドスや特殊作戦執行部]といった精鋭部隊が、暗殺や偵察といった特殊任務でこの兵器を運用したとされています。戦後も、[[朝鮮戦争やマレー危機といった紛争で使用された記録が残っています。

しかし、1945年12月には製造契約が打ち切られ、実際に製造された数は不明です。100丁程度という説が有力ですが、正確な数は未だにわかっていません。その希少性ゆえ、現在ではコレクターアイテムとして非常に高い価値を持つこととなりました。

デ・リーズル カービンの遺産

デ・リーズル カービンは、その優れた消音性能と高い信頼性で、特殊作戦に革命をもたらしたと言えるでしょう。その存在は、現代の消音兵器開発にも影響を与え続けており、その名は、軍事史に刻まれた名銃の一つとして長く語り継がれていくことでしょう。 また、その高い人気から、レプリカや類似品も数多く存在しており、一部は民生用として販売されているのも興味深い点です。

登場作品

デ・リーズル カービンは、その独特のデザインと歴史的背景から、様々なゲーム作品に登場し、プレイヤーにその存在を広く知らしめています。例えば、『バトルフィールド5』では「Command Carbine」として登場するなど、その人気はゲームの世界にも及んでいます。

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