ブリティッシュ・コマンドス

ブリティッシュ・コマンドス：第二次世界大戦の精鋭特殊部隊

序章：コマンドスの誕生

1940年6月、ナチス・ドイツの侵攻に直面したイギリスは、従来の戦闘様式では太刀打ちできないと判断。ウィンストン・チャーチル首相の号令の下、特殊作戦を担う精鋭部隊「ブリティッシュ・コマンドス」が編成されました。当初は陸軍志願者のみでしたが、後に海軍、空軍、さらには占領地出身の外国人義勇兵も加わり、多様な人材から構成される部隊へと発展しました。

編成と組織：多様な部隊の集結

コマンドスの編成は、ダンケルク撤退の余波を受けて、ドイツへの打撃と国民の士気高揚を目的として開始されました。チャーチル首相は、敵地沿岸を恐怖で支配できる特殊部隊の必要性を訴え、参謀総長ジョン・ディルの承認を得て、最初の作戦が実行されました。

初期は陸軍からの志願兵が中心でしたが、1940年秋までに2,000名以上の志願兵が集結。その後、4個大隊規模の特殊任務旅団に再編され、個々の部隊は「コマンドス」と呼ばれるようになりました。各コマンド部隊は、約450名の兵員で構成され、中佐が指揮官を務めました。隊員は各所属部隊からの出向という形で構成され、ベレー帽に原隊の記章を着用しました。

コマンドスは合同作戦司令部に直属し、司令官は当初ロジャー・キース海軍大将、後にルイス・マウントバッテン中将、そしてロバート・レイコック少将が務めました。

コマンド部隊：多様な専門性と役割

英本土では第1～第14コマンド部隊、第30、第62コマンド部隊などが編成され、中東戦線では第50～第52コマンド部隊、中東コマンド部隊が編成されました。特に第10「国際」コマンド部隊は、占領地出身の外国人義勇兵によって構成されており、最大規模のコマンド部隊となりました。

それぞれの部隊は、特殊な任務を担う場合がありました。第2コマンド部隊は当初空挺部隊として編成されましたが、のちに改編されています。第14「北極圏」コマンド部隊は極地作戦を想定した訓練を、第30コマンド部隊は情報収集を主な任務としていました。また、第62コマンド部隊は特殊作戦執行部(SOE)の指揮下に置かれ、特殊作戦に従事しました。

訓練：過酷な訓練で精鋭を育成

初期は各指揮官の裁量に委ねられていましたが、1942年2月、アクナキャリーにコマンド訓練本部が設置され、英陸軍の基礎訓練をさらに発展させた、非常に過酷な訓練が行われるようになりました。訓練は、クロスカントリー・ランニング、ボクシング、山岳訓練、渡河訓練、武器取り扱い、非武装戦闘、地図使用、小型ボート漕艇など多岐に渡り、実弾や爆発物を使用した実践的な訓練が重視されました。訓練過程は厳しく、志願兵は厳しい選抜をくぐり抜けてきました。終戦までに25,000人以上の将兵がここで訓練を受けました。

武装と装備：軽量化と実用性を重視

コマンドスは、通常の歩兵よりも多くの軽機関銃や短機関銃を支給され、軽量化を重視した装備を身に着けていました。リー・エンフィールド小銃、ブレンガン、トンプソン短機関銃、ステンガンなどが主要な武器であり、サイドアームはコルト.45ピストルが用いられました。また、消音装置付きの特殊小銃であるデ・リーズルカービンも採用されましたが、大量生産には至りませんでした。近接戦闘ではフェアバーン・サイクス戦闘ナイフが使用され、防毒マスクや大型の装備は避けられました。

作戦：多様な作戦への参加

コマンドスの作戦は、小規模な襲撃から大規模な上陸作戦まで多岐に渡りました。ノルウェー、チャンネル諸島、地中海、フランス、オランダ、ドイツ、ビルマなど、広範囲にわたる作戦に参加し、多くの成功と犠牲を経験しました。

代表的な作戦としては、ノルウェーでのクレイモア作戦、サン＝ナゼール強襲（チャリオット作戦）、ディエップの戦い、ノルマンディー上陸作戦、スヘルデの戦い、ライン川突破作戦などがあります。これらの作戦では、多くのコマンドス隊員が戦死または負傷し、捕虜となりました。

戦後の影響：コマンド精神の継承

戦後、コマンドスは大部分が解散されましたが、その経験と精神は、現在の[イギリス]]海兵隊コマンド部隊、陸軍空挺連隊、特殊空挺部隊]、[特殊舟艇部隊]などに受け継がれています。また、フランス、オランダ、[[ベルギー、アメリカなど、多くの国の特殊部隊にも影響を与えました。

結語：伝説に残る特殊部隊

ブリティッシュ・コマンドスは、第二次世界大戦におけるイギリス軍の特殊作戦を担った精鋭部隊であり、その勇敢さと献身は、今もなお多くの人々に記憶されています。彼らの功績と犠牲は、歴史に深く刻まれた輝かしいものと言えるでしょう。

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