パイドラー

パイドラーの物語

パイドラー（古希: Φαίδρα, Phaidrā）は、ギリシア神話に登場する重要な女性キャラクターであり、クレテ島の王ミーノースとその妻パーシパエーの娘として位置付けられています。彼女は多くの兄妹に囲まれた家庭で育ち、特にアリアドネーとは交換不可能な絆を持っていたと言われています。

テーセウスとの結婚

パイドラーは、アテーナイの王テーセウスと結婚し、二人の間には息子アカマースとデーモポーンが誕生しました。しかし、この幸せな家庭はすぐに不幸な出来事に見舞われます。テーセウスとの結婚式に出席していた際、彼女はかつてテーセウスの妻であったアマゾーンの女王アンティオペーによる嫉妬に直面しました。アンティオペーは怒りを抱え、他のアマゾーンたちを連れて乱入し、パイドラーと彼女の夫を脅かしましたが、テーセウスの機転によって危機は乗り越えられ、アンティオペーは討たれました。

禁断の恋

しかし、パイドラーの生活はさらに悲劇的な展開を迎えます。彼女は、テーセウスの息子ヒッポリュトスに恋をするようアプロディーテーに仕向けられてしまいます。この禁断の愛は、彼女にとって不吉な運命をもたらしました。恋文を送りましたが、ヒッポリュトスは彼女の気持ちを拒絶し、厳しい言葉をもって彼女を侮辱しました。この裏切りにより、パイドラーは心の苦しみを抱えることとなります。

自らの破滅

パイドラーはその心の痛みから逃れるために、ヒッポリュトスに対して偽りの告発を行う決断を下します。彼女は夜の静けさの中、ヒッポリュトスが自分を襲ったと虚偽の暗示を持ってテーセウスに訴えました。信じられたこの訴えにより、テーセウスはポセイドーンに祈りを捧げ、のちにヒッポリュトスは戦車によって命を落とします。この悲劇の後、パイドラーは自らの行為がもたらした結果を受け入れられず、自ら命を絶つことを選ぶことになりました。

伝説としてのパイドラー

「パイドラー」という名前は「輝ける女」を意味し、彼女は元々は大地の女神としての側面を持っていたとも考えられています。彼女の物語は、その後の文学や芸術にも大きな影響を与え、多くの作家によって描かれています。

登場作品

パイドラーは様々な文学作品に登場し、次のような著名な作品があります。

• - 『ヒッポリュトス』：エウリーピデースによる悲劇
• - 『パエドラ』：セネカによる悲劇
• - 『フェードル』：ラシーヌによる悲劇

参考文献

• - アポロドーロス『ギリシア神話』高津春繁訳、岩波文庫（1953年）

パイドラーの物語は、禁断の愛や悲劇的な運命についての考察を提供し、今日でも多くの読者や学者に影響を与え続けています。彼女を巡る物語は、愛の持つ力と、それがもたらす結果の恐ろしさを伝えるものとされています。

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