デール・ジョルゲンソン

デール・W・ジョルゲンソン

デール・W・ジョルゲンソン（Dale Weldeau Jorgenson、1933年5月7日 - 2022年6月8日）は、20世紀後半から21世紀初頭にかけて、アメリカを代表する経済学者として活躍し、ハーバード大学の教授を務めました。

彼の研究は、特に計量経済学、資本と投資の理論、生産性の分析、経済成長の実証的研究、そして国民経済計算といった広範な分野にわたり、経済学の進歩に計り知れない貢献をしました。企業の投資決定メカニズムを資本のユーザーコストという概念を用いて分析する手法を確立し、その後の実証研究に大きな影響を与えましたことは特筆されます。また、経済成長の源泉、特に全要素生産性（TFP）の計測と分析における彼の功績は広く認識されています。近年では、情報技術（IT）のイノベーションが経済成長や生産性に与える影響、あるいは地球温暖化問題に対する炭素税のような政策の効果に関する実証分析にも積極的に取り組みました。国際的な学術交流も深く、黒田昌裕氏や西水美恵子氏をはじめとする日本の著名な経済学者とも共同で研究論文を発表しています。

経歴

1933年、モンタナ州ボーズマン（Bozeman）に生まれたジョルゲンソン氏は、学術的な探求の道を歩みました。1955年にリード大学で学士号（BA）を取得後、ハーバード大学に進み、1957年に修士号（MA）、そして1959年には経済学の博士号を取得しました。博士号取得と同年にカリフォルニア大学バークレー校の准教授に就任し、1967年には同校の経済学教授に昇任。1969年からは母校であるハーバード大学の教授として、長年にわたり教育研究活動の中心を担いました。

受賞と要職

ジョルゲンソン氏の傑出した業績は、数々の栄誉によって称えられています。1971年には、若手経済学者の最も権威ある賞とされるジョン・ベイツ・クラーク賞を受賞。2006年には、ノーベル経済学賞の有力な候補者に挙げられる研究者に贈られるトムソン・ロイター引用栄誉賞を受賞しました。学術界においても重要な役割を果たし、Econometric Societyやアメリカ経済学会といった主要な経済学術団体の会長を歴任しました。さらに、米国科学アカデミーの科学、技術、経済政策（STEP）部門の創設メンバーの一人であり、1998年からは同部門の委員長を務めるなど、科学技術政策に関する提言にも貢献しました。

主要な業績

彼の研究成果は多くの論文として発表されており、その一部は現代経済学の古典となっています。代表的な論文には以下のようなものがあります。

“Capital Theory and Investment Behavior” (American Economic Review, 1963)
“The Explanation of Productivity Change” (with Z. Griliches, Review of Economic Studies, 1967)
“Tax Policy and Investment Behavior” (with R.E. Hall, American Economic Review, 1967)
“Transcendental Logarithmic Utility Functions” (with L. R. Christensen and L. J. Lau, American Economic Review, 1975)
* “Information Technology and Growth” (with K. J. Stiroh, American Economic Review, 1999)

これらの論文は、投資、生産性、経済成長といったマクロ経済学の根幹をなす問題に対し、厳密な理論と実証分析を結びつける革新的なアプローチを提示し、後続の研究に多大な影響を与えました。デール・W・ジョルゲンソン氏の業績は、今日の経済学研究における実証分析の重要性を改めて示し、多くの研究者に影響を与え続けています。

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