トゥナイト・アイム・ユアーズ

ロッド・スチュワートの11枚目のスタジオ・アルバム『トゥナイト・アイム・ユアーズ』は、彼の音楽キャリアにおいて重要なターニングポイントとなりました。1981年に発表された本作は、従来のロックサウンドに加え、ニュー・ウェイヴやシンセポップといった新たな要素を大胆に取り入れた意欲作として位置づけられています。

制作背景

アルバム収録曲の中でも特に注目されるのが「燃えろ青春」です。クレジット上はカーマイン・アピスがドラムスを担当したとされていますが、実際にはオーバーハイムのシーケンサーやドラムマシンも使用されており、アピス自身も「ハイハットとシンバルを叩いて、ドラムマシンにオーバー・ダビングした」と証言しています。この楽曲は、ロックにテクノロジーを融合させようとする当時の音楽シーンのトレンドを反映したものでしょう。また、「夢をいつまでも」は、癌と闘いながらチャリティ活動を行ったテリー・フォックス、及びCanadian Cancer Societyに捧げられた感動的なバラードです。

本作制作時のアウトテイク「Thunderbird」は、長らく未発表でしたが、2009年発売のボックス・セット『The Rod Stewart Sessions 1971-1998』で初めて日の目を見ました。

反響と評価

『トゥナイト・アイム・ユアーズ』は、全英アルバムチャートで20週にわたりトップ100入りを果たしましたが、最高位は8位にとどまりました。これは、1971年の『エヴリ・ピクチャー・テルズ・ア・ストーリー』以降のソロ・アルバムとしては初めて、全英トップ5入りを逃す結果となりました。一方、全英シングルチャートでは、「トゥナイト・アイム・ユアーズ」が8位、「燃えろ青春」が11位、「ハウ・ロング」が41位を記録しています。

アメリカでは、Billboard 200で11位に達し、「燃えろ青春」は1981年12月19日付のBillboard Hot 100で5位を記録する大ヒットとなりました。続く「トゥナイト・アイム・ユアーズ」も、1982年3月20日付のHot 100で20位に達しています。また、スウェーデンのアルバム・チャートでは7回（14週）連続でトップ10入りし、うち2回（4週）にわたって2位を獲得しました。

音楽評論家の評価は分かれました。Stephen Thomas Erlewineは、オールミュージックにおいて5点満点中4点を付け、「トゥナイト・アイム・ユアーズ」と「燃えろ青春」を本作のハイライトとして挙げ、「これらの曲は、正統派のロックが神経質で奇妙なニュー・ウェイヴの魔力を先駆的に吸収した好例であり、『トゥナイト・アイム・ユアーズ』を、軽いとはいえ楽しめる作品にした」と評しています。一方、ロバート・クリストガウは、本作にB評価を与え、「彼は、デペッシュ・モードこそが次世代のヴァニラ・ファッジと考えているかのような前進を遂げている」と、やや皮肉を込めて評しました。

収録曲

1. トゥナイト・アイム・ユアーズ - Tonight I'm Yours (Don't Hurt Me)
2. ハウ・ロング - How Long
3. トラ、トラ、トラ - Tora, Tora, Tora (Out with the Boys)
4. ティア・イット・アップ - Tear It Up
5. オンリー・ア・ボーイ - Only a Boy
6. ジャスト・ライク・ア・ウーマン - Just Like a Woman
7. ジェラス - Jealous
8. サニー - Sonny
9. 燃えろ青春 - Young Turks
10. 夢をいつまでも - Never Give Up on a Dream

参加ミュージシャン

ロッド・スチュワート - ボーカル
ジム・クリーガン - ギター
ジェフ・バクスター - ギター、ペダル・スティール
ロビン・ル・メシュリエ - ギター
ダニー・ジョンソン - ギター
ケヴィン・サヴィガー - キーボード
デュアン・ヒッチングス - キーボード
ジェイ・デイヴィス - ベース
トニー・ブロック - ドラムス、パーカッション、タンブリン、バックグラウンド・ボーカル
カーマイン・アピス - スネアドラム、ドラムス、バックグラウンド・ボーカル

『トゥナイト・アイム・ユアーズ』は、ロッド・スチュワートが新たな音楽性に挑戦した意欲作として、賛否両論を巻き起こしましたが、彼の音楽キャリアにおいて重要な作品の一つであることは間違いありません。

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