トゥルー・フェイス

ニュー・オーダー「トゥルー・フェイス」：時代を超えて愛される名曲の軌跡

ニュー・オーダーの1987年発表シングル「トゥルー・フェイス」は、バンドの代表曲として、現在もなお高い人気を誇る楽曲です。この曲は、バンド初のベストアルバム『サブスタンス』に先駆けてリリースされ、全英シングルチャートで4位、全米でもトップ40入りを果たすなど、商業的にも大きな成功を収めました。

プロダクションと歌詞の変更

「トゥルー・フェイス」のプロデュースは、ペット・ショップ・ボーイズなども手がけたスティーヴン・ヘイグが担当。彼とニュー・オーダーの初コラボレーション作品となりました。ヘイグは、当初の歌詞の一部が放送に不適切と判断し、メンバーを説得して歌詞を変更させたという逸話も残っています。このエピソードは、楽曲制作における様々な思惑を垣間見せる興味深いものです。変更後の歌詞は、ラジオでのオンエアを可能にした一方、ライブパフォーマンスでは、今でもオリジナルの歌詞が使われることが多いようです。

映画との関わり

「トゥルー・フェイス」は、映画音楽の世界にも進出しました。1988年公開の映画『再会の街/ブライトライツ・ビッグシティ』では、シェップ・ペティボーンによるリミックスバージョンがサウンドトラックに採用されています。その後も、2000年の映画『アメリカン・サイコ』のサウンドトラックにも収録されるなど、幅広い映画作品に彩りを添えました。

トラブルと社会現象

しかし、「トゥルー・フェイス」は、その人気とは裏腹に、暗い影を伴うことになります。2012年には、カナダ人殺人犯が犯行動画のBGMにこの曲を使用し、その後も同様の事件が英国で発生。楽曲が犯罪行為に利用されるという、予期せぬ事態を引き起こしました。これは、楽曲の持つ力と影響力を改めて考えさせる、衝撃的な出来事です。

カップリング曲「1963」

シングルのカップリング曲として収録された「1963」は、アメリカ大統領ジョン・F・ケネディをテーマにした楽曲です。『サブスタンス』のCD版にも収録されており、アルバムの豊かな内容に貢献しています。この曲は、「トゥルー・フェイス」とは対照的な、歴史と社会への深い洞察を示す作品と言えるでしょう。

シングルジャケットとリリース情報

「トゥルー・フェイス」のシングルジャケットは、ニュー・オーダーの作品を数多く手がけたグラフィックデザイナー、ピーター・サヴィルによるデザインです。青地に枯葉というシンプルなデザインでありながら、裏面の「NEW ORDER TRUE FAITH 1963」という文字が、作品の世界観を際立たせています。このジャケットデザインは、ベストアルバム『サブスタンス』のジャケットデザインとも共通点があり、視覚的な統一感を感じさせます。日本盤は1987年7月20日にリリースされました。

ミュージックビデオとBrit Awards

「トゥルー・フェイス」のミュージックビデオは、舞踏家・映像作家のフィリップ・ドゥクフレが監督を務め、1987年のBrit AwardsでPV賞を受賞。彼の才能が世界に認められた瞬間でもありました。

「トゥルー・フェイス 94」とリミックス

1994年には、ベストアルバム『ザ・ベスト・オブ・ニュー・オーダー』のために「トゥルー・フェイス 94」が制作・リリースされました。オリジナルを踏襲しながらも、新たな息吹が吹き込まれたニューバージョンは、全英チャートで9位を記録しました。このアルバムには、「1963」のニューバージョンも収録され、ファンを喜ばせました。しかし、メンバーはこのニューバージョンについて一切コメントしていない点が興味深いところです。

「1963 - 95」とアーサー・ベイカーのリミックス

1995年には、「1963」のニューバージョンとアーサー・ベイカーによるリミックスバージョンが収録されたシングルがリリースされました。アーサー・ベイカーによるリミックスは、2003年のCD-BOXセット『レトロ』にも収録されています。

カバーバージョン

「トゥルー・フェイス」は、多くのアーティストによってカバーされており、その人気は衰えることを知りません。Ghoti Hook、Donots、Flunk、Anew Revolution、そしてジョージ・マイケルなど、様々なアーティストがそれぞれの解釈でこの曲をカバーしています。

まとめ

「トゥルー・フェイス」は、音楽史に刻まれた名曲であると同時に、社会現象や様々な出来事を巻き込んだ、複雑な歴史を持つ楽曲です。その音楽性、歌詞、プロダクション、そして社会的な影響まで、多角的に見ていくことで、この曲が持つ奥深い魅力をより深く理解することができます。

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