ザ・ベスト・オブ・ニュー・オーダー

ニュー・オーダーのベストアルバム『ザ・ベスト・オブ・ニュー・オーダー』(1994年発表)は、バンドのキャリアにおける重要な転換期を反映した作品です。ファクトリー・レコード破産後のロンドン・レコード移籍第一弾アルバム『リパブリック』に続くリリースとなり、1987年のベスト盤『サブスタンス』以来、2作目のベストアルバムとなります。

『サブスタンス』がデビューからのシングル曲やB面曲を網羅していたのに対し、『ザ・ベスト・オブ・ニュー・オーダー』は、初期の楽曲は除き、『ロウ・ライフ』(3rdアルバム)以降、1984年のシングル「シーヴス・ライク・アス」以降の楽曲で構成されている点が大きな違いです。そのため、バンドの成熟期以降のサウンドを深く知ることができる内容となっています。また、UK盤とUS盤では収録曲が異なっており、日本盤はUK盤に準拠しています。

このアルバムの特徴として、4曲の「94ヴァージョン」の存在が挙げられます。「トゥルー・フェイス」「ビザール・ラヴ・トライアングル」「1963」「ラウンド&ラウンド」の4曲は、アルバムのために再レコーディングされました。しかし、オリジナルとの違いは非常に小さく、聴き比べても見つけるのが難しいほどです。この再レコーディングの理由は不明で、メンバーからの公式なコメントもありません。さらに、US盤の「1963」は、アーサー・ベイカーによるリミックスである「95ヴァージョン」とは異なるバージョンが収録されています。このアルバムから「トゥルー・フェイス 94」がシングルカットされた他、前身バンドであるジョイ・ディヴィジョンの「ラヴ・ウィル・テア・アス・アパート」の94バージョンもシングルリリースされましたが、こちらもオリジナルとの差は僅かです。

収録内容は、ニュー・オーダーの代表曲からアルバム『テクニーク』からのみ収録された楽曲まで、多様な楽曲が選曲されています。『テクニーク』収録の「ヴァニシング・ポイント」は、このベストアルバムで唯一シングル化されていない楽曲です。また、「ブルー・マンデー 88」は、1988年のシングルリリース時の表記「Blue Monday 1988」とは異なり、アルバムでは「ブルー・マンデー 88」という表記になっています。

このアルバムは、BBC制作のドキュメンタリー『New Order Story』やリミックス集『ザ・レスト・オブ・ニュー・オーダー』と相前後してリリースされました。これらの作品群は、ニュー・オーダーのこれまでの活動の集大成と言えるものであり、バンドの解散説を招く要因となりました。特に、バーナード・サムナーとピーター・フックの不仲説も囁かれており、解散の噂は『ゲット・レディー』(2001年)発表後も完全に収束することはありませんでした。

『ザ・ベスト・オブ・ニュー・オーダー』は、ニュー・オーダーの代表曲と隠れた名曲を網羅した、彼らの中期から後期にかけてのサウンドを堪能できる、重要なベストアルバムと言えるでしょう。楽曲の選曲や94バージョンの存在、そしてバンドを取り巻く状況を考慮すると、このアルバムは単なるベスト盤を超えた、ニュー・オーダーの歴史を語る上で欠かせない作品と言えます。

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