トゥールヴィル級駆逐艦

トゥールヴィル級駆逐艦：フランス海軍の対潜戦の要

トゥールヴィル級駆逐艦は、フランス海軍が運用した駆逐艦の艦級です。当初はコルベットとして計画されましたが、後にフリゲートに分類変更され、NATOでは駆逐艦として扱われました。第二次世界大戦後のフランス海軍は、潜水艦の脅威増大に対応するため、対潜能力を重視した艦艇の開発を進めており、本級はその成果と言えるでしょう。

誕生の背景：対潜戦への対応

第二次世界大戦後、フランス海軍は対空・対水上戦闘能力を重視した艦隊護衛艦を建造していました。しかし、冷戦下における潜水艦の脅威の高まりを受け、対潜戦能力の強化が喫緊の課題となりました。1956年には、艦隊護衛艦をベースに、対潜戦能力を向上させた「ラ・ガリソニエール」が建造されました。これが、トゥールヴィル級の開発につながる重要な一歩となりました。

その後、1960年代には対潜戦重視の大型護衛艦（コルベット）の建造計画が進められ、「アコニト」が建造されました。「アコニト」は艦隊護衛艦としては低速、船団護衛艦としては高性能すぎるという中途半端な艦となり、当初計画された姉妹艦の建造は中止されました。この経験を踏まえ、より実用的な新型コルベットとして開発されたのが、トゥールヴィル級です。

設計：強化された対潜能力

トゥールヴィル級は、「アコニト」を拡大・強化した設計となっています。船型は長船首楼型、船体構造はマック構造を踏襲しました。推進方式は「アコニト」の1軸推進から従来通りの2軸推進に戻され、主機関の出力向上により、最大速力は27ノットから32ノットに向上しました。フィンスタビライザーの装備により、高い耐航性を実現しました。

装備：進化するセンサーと兵器システム

センサー類は、当初「アコニト」と同等のものが予定されていましたが、建造中に更新され、最新のレーダーが搭載されました。対空捜索レーダーにはDRBV-26、目標捕捉レーダーにはDRBV-51B（当初はDRBV-50）が採用されました。ソナーは艦首装備のDUBV-23と可変深度式のDUBV-43を搭載しました。

主砲は「アコニト」と同じく55口径100mm単装砲（Mle.68）を3基搭載していましたが、3番艦以降は、3番砲をクロタル個艦防空ミサイル8連装発射機に換装。後に1、2番艦も同様の換装が行われました。対水上攻撃能力として、フランスの新造大型護衛艦としては初めてエグゾセMM38艦対艦ミサイル（後にMM40に更新）を3連装発射筒で装備しました。

対潜兵器としてマラフォン対潜ミサイル発射機、ウェストランド・リンクス哨戒ヘリコプター2機を搭載可能にするヘリコプター甲板とハンガーを備えています。

1986年には1番艦にDSBV-61曳航ソナーを追加。1994年から1996年にかけて1、3番艦は、12年間の艦齢延長を含む大規模な近代化改修を受けました。マラフォン発射機が撤去され、戦術情報処理装置、DSBX-1 SLASM、電波探知装置(ARBB-33)、衛星通信システム(シラキューズII)などが更新されました。2番艦は旗艦として改装されましたが、1999年に退役しました。

まとめ：フランス海軍対潜戦技術の集大成

トゥールヴィル級駆逐艦は、フランス海軍の対潜戦能力向上というニーズに応え、建造された艦級です。その設計思想や装備は、冷戦期のフランス海軍の技術力を示す重要な事例となっています。近代化改修を経ることで、長きに渡りフランス海軍の戦力として貢献しました。本級の運用実績は、後のフランス海軍艦艇の設計に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

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