トウ

トウ（籐）とは

トウ（籐）は、ヤシ科トウ亜科に属するつる性の植物の総称で、約13属600種が存在します。ロタンやラタンとも呼ばれ、英名では rattan と表記されます。中でも、ヤシ科トウ属の蔓性木本（300～400種）が代表的です。

トウの繊維は、植物の中で最も長く、かつ最強とも言われ、家具や籠などの材料として古くから利用されてきました。

分布

トウは、アフリカ、アジア、ジャマイカ、オーストラリアなどの熱帯地域に広く分布しています。トウ亜科の分布の北限は台湾であり、日本には自生していません。

特徴

トウは、他のヤシ科植物と同様に、最初はロゼット状に成長し、ある程度太くなると直立した枝を伸ばします。その後、つる植物としての性質を発揮し、他の樹木などを支えにして成長します。

幹は直径2～5cmほどの細いつる状で、節があり、表皮にはトゲがあります。外見は竹に似ていますが、内部構造や生長様式は大きく異なります。

トゲは、他の植物によじ登る際の登攀装置として機能し、葉の先端部のものはシルス、不稔の花序をフラジェルムと呼びます。また、茎のトゲには、動物に踏みつけられたり食べられたりするのを防ぐ役割もあります。

サゴヤシ属やピガフェッタ属、ラフィア属など、太く直立した幹を持つ種類も存在します。

種類

トウには、多くの種類が存在します。以下に代表的なものをいくつか紹介します。

トウ属 (Calamus)：最も代表的なトウの仲間
ヒメトウ属（キリンケツ属）(Daemonorops)：赤い樹脂「竜血」を採取できる種類がある
サラッカ属 (Salacca)：サラクなどの食用果実を付ける種類がある
サゴヤシ属 (Metroxylon)：サゴ澱粉を採取できるサゴヤシなど
ラフィア属 (Raphia)

利用

トウは、その丈夫さと柔軟性から、様々な用途に利用されています。

家具：椅子やテーブルのフレーム、座面、背もたれなどに利用されます。
籠：様々な形状の籠が作られ、収納や運搬に利用されます。
杖：丈夫で軽量なため、杖の材料として利用されます。
鞭：シンガポールやマレーシアなどで行われている鞭打ち刑や武術で使用されます。
熱気球のゴンドラ：現在でも、籐をベースとしたものが主流です。

丸籐と割籐

トウは、丸籐と割籐に大別されます。

丸籐：太民、双棟、三棟、四棟の4種があり、椅子やテーブルの脚などに用いられます。
割籐：丸芯籐（縦編、横編、小物用）、半芯籐（柱巻、縁巻用）、皮籐（椅子やテーブルなどの小物用）の3種があり、籐張りに用いられます。

日本におけるトウ

日本では、トウは自生していませんが、古くから輸入され、家具や籠などの材料として利用されてきました。南西諸島には、トウに似たトウツルモドキ科のトウツルモドキが分布しており、かつてはトウと同様に民具の素材として利用されていました。

その他の利用

トウの種類によっては、果実から「竜血」と呼ばれる赤い樹脂が得られます。この樹脂は、かつては薬効があると信じられ、また、木の染料として明るい桃色に染めるのに使われていました。また、種類によっては、タケノコのように茎の先端部を食用にできるものもあります。

籐と藤

漢字の「籐」は竹冠であり、草冠の「藤」（フジ）とは異なります。トウはヤシ科トウ属の蔓性木本であり、フジはマメ科フジ属の蔓性落葉木本です。ただし、中国語ではトウを「藤」と書き、フジ属は「紫藤」といいます。

中国語の「籐」は、第一義では竹の器のことを指し、転じて竹に似たつる植物のことも指します。

トウは、私たちの生活に深く根ざした植物であり、その多岐にわたる利用法は、これからも受け継がれていくことでしょう。

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