サゴヤシ

サゴヤシとは

サゴヤシ（マレー語・インドネシア語: sagu、英語: sago palm）とは、主にヤシ科の植物で、幹から食用デンプンであるサゴを採取できる植物の総称です。サゴは東南アジアを中心に食用とされ、ソースの原料にも利用されています。

サゴを採取できる植物

サゴは、ヤシ科のサゴヤシ属（Metroxylon）など11属や、ソテツ目のソテツ属（Cycas）など3属から採取できます。英語では、サゴが採れるソテツ属の植物も「sago palm」と呼ばれることがあります。

主な種は以下の通りです。

ヤシ科

サゴヤシ（ホンサゴ）（Metroxylon sagu）
トゲサゴ（Metroxylon rumphii） - ホンサゴと同種とされることが多い
クジャクヤシ（Caryota urens）
チャボナツメヤシ（Phoenix acaulis）

ソテツ目

ソテツ（Cycas revoluta）
フロリダソテツ（Zamia integrifolia syn. Z. floridana） - 別名クーンティー、フロリダアロールート

サゴヤシの中で最も広く利用されているのは、サゴヤシ属の植物であり、特にホンサゴが狭義のサゴヤシとされています。

分布と地域誌

サゴヤシは東南アジア島嶼部やオセアニア島嶼部の低湿地に自生しています。サゴヤシの植物学的な研究はまだ発展途上であり、原産地は解明されていません。

東南アジアでは、イネの導入以前にサゴヤシが主食の一端を担っていたと考えられています。南インドでも食用にされており、パプアニューギニアでは現在でも約30万人がサゴヤシのデンプンを主食としています。一方で、ミクロネシアやポリネシアではあまり食べられていません。

ソテツ属のソテツから採取されるデンプンは、琉球列島や南日本でも食用にされていましたが、毒成分（サイカシン）を含むため、十分な毒抜きが不可欠です。

歴史

サゴヤシに関する最も古い文献記録は、13世紀のマルコ・ポーロの『東方見聞録』ではないかと言われています。この中で、「スマトラには、幹に小麦粉が詰まった喬木がある」と記述されており、サゴヤシからデンプンを採取する方法についても言及されています。

特徴

サゴヤシは、成熟して収穫可能になるまでに7年から15年程度かかります。生涯に一度だけ開花しますが、それまでは継続的に幹の中にデンプンを蓄積します。そのため、十分に成長したサゴヤシを伐採してデンプンを収穫するという方法が取られます。伐採されたサゴヤシは根から再生します。

サゴヤシ属の場合、1本のサゴヤシから約100キログラム程度のデンプンを採取できます。サゴヤシの利点は、多年生で年間を通して収穫できること、病害虫による被害が少ないこと、そして作物の栽培に適さない土地でも生育できることです。

しかし、サゴヤシのデンプンには栄養分がほとんど含まれていないため、タンパク質やビタミン、ミネラルなどを他の食物から摂取する必要があります。

利用法

サゴヤシの収穫は、通常5人から10人程度のグループで行われます。男性がサゴヤシを切り倒し、樹皮を剥ぎ取った後、女性が樹幹の髄を砕き、水で揉んでデンプン質を分離します。このデンプン質を沈殿させて回収し、乾燥させて保存します。

サゴは、水で練って生地を作り、加熱してパン状にしたり、煮て粥状にしたりして食べられます。また、ブルネイや東マレーシアでは「アンブヤット」という粥が主食の一つです。パプアニューギニアでは、湿ったデンプンの塊である「サクサク」として流通しています。

サゴから作られるサゴパールは、タピオカパールよりも歴史が古く、東南アジアからヨーロッパ、中国、台湾、琉球王国にも輸出されていました。中華圏では「沙穀米」や「西穀米」、琉球では「セーカクビー」と呼ばれていました。

さらに、サゴヤシの倒木に棲みつくヤシオオオサゾウムシの幼虫も食用とされます。これは、サゴデンプンにはない動物性タンパク質を摂取するための貴重な手段です。デンプンを採取した後の木屑は、燃料や堆肥として利用されます。

日本では、サゴは安価な糖質の原料として工業用に利用されることが多いです。

画像

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脚注

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参考文献

大塚柳太郎「サゴヤシ文化圏」『海のアジア4: ウォーレシアという世界』岩波書店、2001年。ISBN 9784000265744。

関連項目

サゴヤシ学会

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