フジ属

フジ属（Wisteria）について

フジ属は、マメ科に分類されるつる性の落葉木本です。一般的に「フジ」として知られていますが、これは属の代表的な種であるノダフジ（Wisteria floribunda）の和名でもあります。そのため、属全体を指す場合と、特定の種を指す場合があるため、文脈に応じて注意が必要です。

フジ属の特徴

形態: つる性で、他の植物に絡みつきながら成長します。4月から5月にかけて、淡い紫色や白色の花を房状に垂れ下げて咲かせます。
生態: 落葉性であり、冬には葉を落とします。

分布

フジ属は、日本、東アジア、北アメリカに自生しています。日本には、ノダフジとヤマフジの2種が固有種として分布しています。また、中国にはシナフジなどが、北アメリカにはアメリカフジが自生しています。

興味深いことに、園芸目的でアメリカに導入されたシナフジとノダフジは、その美しい花と強い繁殖力から、特にアメリカ南東部で侵略的外来種として問題になっています。

下位分類

フジ属には、約8種前後の種が含まれています。

ヤマフジ (Wisteria brachybotrys)：日本固有種
シラフジ (W. b. f. alba)：ヤマフジの白花品種
Wisteria brevidentata
フジ（ノダフジ） (Wisteria floribunda)：日本固有種
シロバナフジ (W. f. f. alba)：ノダフジの白花品種
アケボノフジ (W. f. f. alborosea)：ノダフジの淡紅花品種
アメリカフジ (Wisteria frutescens)
ナツフジ (Wisteria japonica)：ノダフジに含めることもあります。
アケボノナツフジ (W. j. f. alborosea)
ヒメフジ (W. j. f. microphylla)
Wisteria macrostachya
シナフジ (Wisteria sinensis)
Wisteria venusta
Wisteria vilossa
Wisteria × formosa

フジとヤマフジ

ノダフジとヤマフジは、日本の固有種であり、古くから日本人に親しまれてきました。万葉集の時代には、区別なく「フジ」として歌に詠まれており、現在でも両種をフジと総称することがあります。

利用

日本では、フジは園芸植物として藤棚や盆栽に仕立てられることが多く、その美しい花を楽しむことができます。一方、山林に自生するフジは、他の樹木に絡みつき、光合成を妨げたり、木材の価値を損ねたりするため、手入れの行き届いた人工林では刈り取られることがあります。しかし、近年では木材価格の低下などにより、管理放棄された山林でフジが繁茂する傾向が見られます。

フジは、食用や薬用としても利用され、若芽は和え物や炒め物に、花は天ぷらや塩漬けに、種子は珍味として食されます。

また、フジの蔓は、家具や籠などの材料として、繊維は藤布や藤紙の材料として利用されます。

文化

日本では古くからフジが親しまれてきたため、各地でフジに因んだ名称や意匠が見られます。

文学・芸術: 『古事記』や『万葉集』、『枕草子』、『源氏物語』など、多くの文学作品にフジが登場します。また、絵画や工芸品にもフジをモチーフとした作品が多く存在します。
名字: 日本人の名字ランキングでは、上位100位以内に「藤」のつく名字が13種類もランクインしており、特に「藤原氏」の流れを汲む名字が多く存在します。
家紋: 藤紋は日本の家紋の一つで、藤の花や葉をデザインしたものが用いられています。

名所

日本各地には、樹齢を重ねた見事なフジが見られる名所が数多く存在します。

国の特別天然記念物: 牛島のフジ（埼玉県）
国の天然記念物: 藤島の藤（岩手県）、熊野の長フジ（静岡県）、黒木のフジ（福岡県）、宮崎神宮のオオシラフジ（宮崎県）
都道府県の天然記念物: あしかがフラワーパークの大藤（栃木県）、長泉寺の骨波田の藤（埼玉県）、玉敷神社の大藤（埼玉県）など
その他: 池ノ内の藤（福島県）、浅草初音小路飲食店街の藤棚（東京都）、亀戸天神社の藤（東京都）、岡崎公園の五万石藤（愛知県）など

フジと名のつく植物

フジに似た形状から名付けられた植物も多く存在します。

マメ科：ナツフジ、ニワフジ、フジキ、ノボリフジ、フジカンゾウ
キク科：フジバカマ
ツヅラフジ科：ミヤコジマツヅラフジ、アオツヅラフジ
フジウツギ科：フジウツギ、フサフジウツギ
ナデシコ科：フジナデシコ
バラ科：フジイバラ


フジは、その美しい花と日本文化との深い関わりから、古くから人々に愛されてきた植物です。

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