トウゴクサイシン

トウゴクサイシン（東国細辛）

トウゴクサイシン（学名: Asarum tohokuense）は、ウマノスズクサ科カンアオイ属に属する多年草です。日本固有種であり、本州の関東地方・中部地方の北部から東北地方にかけて分布しています。

特徴

トウゴクサイシンは、地上を這うように伸びる茎から2枚の葉を出します。葉柄は3cmから16cm程度の長さになり、葉身は5cmから13cm程度の長さと幅を持ちます。葉の質感は薄く、先端は尖っており、葉脈に沿って短い毛が生えているのが特徴です。

花期は4月から5月にかけてで、茎の先に1つの花を咲かせます。花弁はなく、萼裂片が花弁のように見えます。萼筒は扁球形で、長さは6.5mmから10.5mm、直径は10mmから15mm程度です。萼筒の入り口は広く、直径は5.5mmから11mmと、萼筒の直径の半分以上を占めます。

萼筒の内壁は、同属のウスバサイシン（A. sieboldii）とは異なり、全体が暗紫色になることはなく、白色や淡桃色で部分的に暗紫色を呈します。萼筒内壁には低い隆起した襞が15個から21個あります。萼裂片は卵状三角形で、長さは5mmから9.5mm、幅は7mmから12mm程度で、平らに開くかやや斜めに開き、表面には短い毛が生えています。雄蕊は12個、花柱は6個あります。

分布と生育環境

トウゴクサイシンは、山地の落葉広葉樹林の林床に生育します。ひっそりと佇む姿は、春の訪れを静かに告げているようです。

従来、これらの地域に分布するカンアオイ属ウスバサイシン節の種は、ウスバサイシンとして認識されていましたが、2007年の山路弘樹氏、中村輝子氏らの研究によって、独立した種であることが判明し、新種として命名、記載されました。

ウスバサイシンとの違い

トウゴクサイシンは、一見するとウスバサイシンに似ていますが、以下の点で区別できます。

萼筒内壁の色: トウゴクサイシンの萼筒内壁は白色や淡桃色で部分的に暗紫色ですが、ウスバサイシンの萼筒内壁は全体が暗紫色です。
萼筒の形状: 萼筒の入口の広さも異なります。

これらの違いから、トウゴクサイシンはウスバサイシンとは異なる独立した種として認識されています。

ギャラリー

[ギャラリーの画像は省略]

参考文献

大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 1』2015年、平凡社
『植物研究雑誌』The Journal of Japanese Botany
* 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名－学名インデックス」（YList）

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