トウゾクカモメ

トウゾクカモメ (盗賊鷗)

トウゾクカモメ（学名：Stercorarius pomarinus）は、チドリ目トウゾクカモメ科に属する独特な鳥類です。その名は、他の水鳥や海鳥が捕らえた獲物を空中で奪取する行動から由来しています。これは、彼らが空中での攻撃によって食料を確保できることを示しています。

分布

トウゾクカモメはユーラシアと北アメリカの北極圏で繁殖し、非繁殖期には赤道近くの熱帯地域や南半球まで分布を広げます。具体的には、南アフリカやオーストラリア、チリ周辺で見られます。日本では旅鳥または冬鳥として、特に太平洋側の海上で観察され、春や秋にはその数が増加します。夏期にも存在が確認されることがあります。

形態

トウゾクカモメの全長は約49cm、翼を広げた際の大きさは約130cmです。体色には淡色型と暗色型があり、それぞれ異なる模様を持ちます。どちらのタイプも初列風切（羽の一部）に白い斑点が目立ちます。

淡色型は、目の周りから頭頂にかけてが黒褐色で、のどから首にかけては白色、側頸部は黄色がかった白色をしています。嘴は淡赤色または淡青灰色で、先端は黒くなっています。一方、暗色型は体全体が黒褐色に覆われています。若鳥や幼鳥は成鳥に比べて尾羽が短い傾向があります。

生態

非繁殖期には洋上での生活が主となり、あまり群れを作らずに単独で飛ぶことが多いです。また、他の海鳥よりも高い高度を飛行する傾向があります。悪天候時には陸地近くの湾や港で観察されることもあります。

彼らはカモメ科やミズナギドリ科、カツオドリ科の水鳥を空中で襲い、獲物を放出させることで空中で空食事を奪ったり、自ら魚を捕食することもあります。繁殖期には、小型哺乳類や海鳥の雛、卵なども捕食の対象になります。

営巣はツンドラ地域の地面で行い、つがいが広い縄張りを持ちます。繁殖期は通常6月から9月で、2個の卵を産卵します。その後の抱卵は25日から27日、雛の育成には31日から35日ほどかかります。

トウゾクカモメの鳴き声は、特に「グェー グェー」や「ビィー ビィー」という形で知られていますが、日本近海でこれを耳にすることは稀です。トウゾクカモメは、そのユニークな行動と広範囲な分布によって、興味深い観察対象とされています。

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