トウヤクリンドウ

トウヤクリンドウ（当薬竜胆、学名: Gentiana algida）は、リンドウ科リンドウ属に分類される多年草の高山植物です。名前の由来は、薬草として知られるセンブリと同様に、胃薬としての効果があることにちなんでいます。

特徴

トウヤクリンドウは、高さが10～25cm程度に成長します。開花時期は8月から9月上旬で、茎の先端に2～3個の淡い黄色の花を咲かせます。花は長さが3～4cmほどで、花弁には緑色の斑点があるのが特徴です。また、花は日光が当たらないと開かない性質を持っています。茎に対生する葉は、披針形から長楕円状披針形で、長さは2～5cm程度です。

学名の「algida」は「寒冷な」という意味を持ち、この植物が寒冷な環境を好むことを表しています。この学名は、1789年にドイツの植物学者ペーター・ジーモン・パラスによって命名されました。

分布

トウヤクリンドウは、北アジアから北米にかけて広く分布しており、日本では北海道から中部地方以北の高山帯の砂礫地や草地に生育しています。基準標本はシベリア東部などで採取されたものが用いられています。

植物学者の田中澄江は、著書『花の百名山』の中で、槍ヶ岳を代表する花の一つとしてトウヤクリンドウを紹介しました。

近縁種

トウヤクリンドウの近縁種には、エゾトウヤクリンドウ（蝦夷当薬竜胆、学名: Gentiana algida f. igarashii）があります。エゾトウヤクリンドウは、別名クモイリンドウ（雲居竜胆）とも呼ばれ、北海道の大雪山に分布しています。トウヤクリンドウと比較して小型であり、花は長さ約5cmとやや大きいのが特徴です。

種の保全状況評価

環境省のレッドリストには指定されていませんが、地域によっては絶滅危惧種として扱われています。石川県ではレッドリストの絶滅危惧I類、新潟県では危急種（絶滅危惧II類）、北海道では準絶滅危惧の種に指定されており、その保全が求められています。

トウヤクリンドウは、高山植物ならではの美しい姿と、薬草としての歴史を持つ魅力的な植物です。その生育環境はデリケートであり、温暖化などの影響で生息地が減少する可能性も指摘されています。今後もこの植物の保護と研究が重要となるでしょう。

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