トガリアンコウザメ

トガリアンコウザメについて

概要

トガリアンコウザメ（学名：Scoliodon laticaudus）は、メジロザメ科に属するサメの一種です。このサメはインド洋および西太平洋の熱帯地域に広く分布し、特徴的に大きな群れを作って生活しています。体長は約72センチメートルで、平たい吻（くちばし）が特長です。食餌は主に小魚や無脊椎動物で、特筆すべきは魚類の中でも最も発達した胎生を持っている点です。雌は、毎年6か月の妊娠期間を経て、6から18匹の仔を産むことが知られています。一般的に人間には無害で、漁業の上では非常に重要な種と位置付けられていますが、IUCN（国際自然保護連合）によってその保全状況は準絶滅危惧として評価されています。

分類と学名の由来

トガリアンコウザメは、1838年にドイツの生物学者、ヨハネス・ペーター・ミュラーとヤーコプ・ヘンレによって最初に記載されました。彼らの研究は「Systematische Beschreibung der Plagiostomen」という文献にまとまっています。ホロタイプとされる標本は、フンボルト博物館に所蔵されている42センチメートルの剥製と推定されています。属名の「Scoliodon」は古代ギリシャ語の「skolex」（ミミズ）と「odon」（歯）に由来し、種小名の「laticaudus」はラテン語の「latus」（幅広い）と「cauda」（尾）から来ています。

形態

トガリアンコウザメの体型は小さく、ずんぐりしていて、幅広い頭部を持っています。吻は非常に平たくシャベル型で、目と鼻孔は小さな特徴を持ちます。口は眼のかなり後方まで延びており、上顎には25から33の歯が並び、下顎には24から34の歯があります。これらの歯は細くて鋸歯のない剣状で、斜めに尖っています。また、胸鰭（むなびれ）は短く、幅広い形状をしており、第一背鰭は胸鰭に近い位置にあります。背面はブロンズグレーに、腹面は白色ですが、鰭の色は体色よりも暗いと言われています。最大サイズは74センチメートルと記録されていますが、一部で1.2メートルの報告も存在します。

分布

トガリアンコウザメはインド太平洋西部に分布し、特にタンザニアから南アジアにかけての地域で見られます。このサメは通常、沿岸の岩礁底に生息し、主に深度10から13メートルの場所にいます。以前は東南アジアや日本など、より広範囲に生息していると考えられていましたが、最近の研究によってこれらの個体群は別の亜種であるボルネオトガリアンコウザメであることが確認されました。

生態

このサメは、豊富な個体数が確認できる場所では大規模な群れを形成することが知られています。主にアンチョビやサイウオ科、ハゼ、テナガミズテングなどの小型硬骨魚を食物としており、時にはエビ、カニ、コウイカ、シャコなども捕食します。トガリアンコウザメの繁殖については、雌は年に一度妊娠し、妊娠期間は6か月で、生まれる仔のサイズはおよそ12から15センチメートルです。仔の出生数は6から18と幅がありますが、雄は24から36センチメートル、雌は33から35センチメートルで性成熟に達します。性成熟には6か月から2年かかるとされています。寿命は雄で約5年、雌で6年程度です。

人との関連

トガリアンコウザメは人間には無害ですが、漁業で広く捕獲されています。彼らは零細漁業から商業漁業に至るまで、多くの方法で捕らえられます。肉は他の魚の釣り餌や食用、鰭はふかひれとして利用されるほか、その他の部分は魚粉として加工されます。また、肉を氷酢酸で処理し、粉末状のゲルにする加工も行われており、これがサプリメントや生分解性フィルム、さらにはソーセージの皮とする用途で使用されています。重要な漁業資源ですが、漁業データは乏しいため、保護活動には限界があります。沿岸開発による生息環境の影響も無視できないため、保全が求められています。

もう一度検索