トチュウ

トチュウ（杜仲）について

トチュウ（学名: Eucommia ulmoides）は、中国を原産とする落葉高木です。植物分類上、トチュウ目トチュウ科に属する唯一の種であり、非常に特殊な存在です。クロンキスト体系では独立した目として扱われていましたが、APG分類体系ではガリア目に分類されています。

特徴

トチュウは雌雄異株であり、葉はニレやケヤキに似た楕円形をしています。花は緑がかった白色で、実は翼果です。成長すると樹高は20メートルほどになります。化石の記録から、かつてはヨーロッパや北米など広い範囲に分布していたことがわかっていますが、現在では中国以外ではほとんど見られません。

樹皮は漢方薬の原料として利用され、若葉はお茶として飲まれます。樹皮や枝、葉を折ると白色の乳液が滲み出てきます。この乳液はガタパーチャと呼ばれ、天然ゴムの原料としても利用されています。トチュウは寒冷地でも育つため、天然ゴムの産出木としても知られています。ただし、本来のガタパーチャはアカテツ科の植物から採取されるもので、トチュウの乳液はそれと似ていることから同じ名前で呼ばれています。

また、トチュウ茶にはカフェインが含まれていないため、妊婦や子供でも安心して飲むことができます。

杜仲（生薬）と杜仲茶の効能

トチュウの樹皮は「杜仲」という生薬名で知られ、医薬品として扱われています。杜仲は腰痛や足腰の倦怠感の解消、頻尿の改善、肝機能・腎機能の強化、高血圧の緩和などに効果があるとされています。

葉を煎じて作る杜仲茶には、ゲニポシド酸という成分が含まれており、血圧降下や肝機能向上に効果があると言われています。ただし、葉は効能を謳わなければ食品として扱われます。

日本では、1970年代に一度杜仲茶ブームが起こりましたが、すぐに下火になりました。その後、1990年代に日立造船因島工場バイオ技術部（後の日立造船バイオ）が製造・販売を開始し、大ブームを巻き起こしました。さらに、2006年にはテレビ番組で因島産の杜仲茶が紹介されたことで、再びブームが起こりました。現在は、小林製薬が杜仲茶事業を引き継ぎ、テレビCMなどを通して販売を続けています。

杜仲の栽培は中国からの輸入品が多いですが、日本国内でも広島県尾道市因島、長野県伊那地方、秋田県大仙市などで栽培されています。特に因島で生産される杜仲の葉は、地元ブランドの「因島杜仲茶」として販売されています。

和杜仲について

平安時代には「和杜仲」という強壮剤が貴族階級で用いられていましたが、これはトチュウ科の植物ではなく、ニシキギ科のマサキであるとされています。日本にトチュウが導入されたのは1918年（大正7年）頃だと考えられています。

まとめ

トチュウは、古代から利用されてきた歴史を持つ貴重な植物です。その健康効果が再評価され、近年再び注目を集めています。漢方薬や健康茶としてだけでなく、天然ゴムの原料としても利用できる多面的な価値を持っています。

脚注

* トチュウ、杜仲 - 素材情報データベース＜有効性情報＞（国立健康・栄養研究所）

もう一度検索