アカテツ科
アカテツ科（Sapotaceae）は、双子葉植物に属する科で、約65属、800種にも及ぶ多様な植物を含んでいます。この科の植物は、熱帯や亜熱帯地域に広く分布しており、常緑性の木本であることが特徴です。日本では、アカテツ属のアカテツやその変種であるコバノアカテツが南西諸島や小笠原諸島で見られ、小笠原諸島固有種であるムニンノキもこの科に属しています。
アカテツ科の植物は、葉が単葉でらせん状に配列しているのが特徴です。花は両性花であり、子房は上位に位置しています。果実は液果となるものが多く、多様な形状や色合いを持っています。これらの特徴は、アカテツ科の植物を他の科と区別する上で重要なポイントとなります。
アカテツ科の植物は、その多様性から多くの用途に利用されています。特に、乳液から得られる樹脂は、グッタペルカやチクルといった工業原料として重要です。グッタペルカノキはグッタペルカの、サポジラはチューインガムの原料であるチクルを採取するために利用されます。また、サポジラやスターアップルのように、熱帯地域で食用とされる果樹も多数あります。
種子に含まれる油脂も重要な資源であり、モロッコ南西部に見られるアルガンノキからは、食用や化粧品用のアルガン油が採取されます。その他、モアビ、マコレ、アニグレなどの木材は、建築材料や家具の製造に利用されており、東南アジア産のニヤトーも同様に木材として広く利用されています。ニヤトーは複数の樹種を指す総称として用いられ、パラキウム属だけでなく、Donella属、マドフカ属、Payena属、アカテツ属など、多くの属の複数の種を含みます。マコレやモアビはサクラの代替材として、ニヤトーは色合いが似ていることから「洋桜」や「アフリカンチェリー」として取引されることがあります。
以下に、アカテツ科の主な属とそれぞれの代表的な種を挙げます。分類はGovaerts et al. (2019) に基づいています。
Autranella:
ムクルング (A. congolensis) - ガボン、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国に分布する。
Baillonella:
モアビ (B. toxisperma) - ガボンとコンゴに分布する。
Breviea:
アポベアウ (B. sericea) - コートジボワールに分布する。
Chrysophyllum (オーガストノキ属):
スターアップル (C. cainito)
ジャマイカスモモ (C. oliviforme subsp. oliviforme)
Diploknema:
インドバターノキ (D. butyracea)
Donella:
ヒメカイニット (D. lanceolatum)
Gambeya:
アフリカスターアップル (G. albida)
G. africana
ロンギ (G. beguei)
G. boiviniana
G. lacourtiana
アカアニングエリー (G. perpulchra)
G. subnuda
Inhambanella:
ヘンリクバラタ (I. henriquesii)
Lecomtedoxa:
オコラングマ (L. klaineana)
Letestua:
コンゴタリ (L. durissima)
Madhuca (マドフカ属):
ビティス (M. betis)
モワ (M. longifolia)
イリッペ (M. longifolia var. latifolia)
ニャトーカチャウ (M. motleyana)
マラバルバタノキ (M. neriifolia)
マドゥカ (M. utilis)
Manilkara (マニルカラ属):
バラタゴムノキ (M. bidentata)
アマゾンバラタ (M. bidentata subsp. surinamensis)
サウパプア (M. fasciculata)
カロリンアカテツ (M. hoshinoi) - カロリン諸島（ポンペイ島）固有種。
パライ (M. hexandra)
マサランデューバ (M. huberi)
サワノキ (M. kauki)
モーハ (M. littoralis)
モンギンザ (M. mabokeensis)
ウドイド (M. udoido) - カロリン諸島（パラオ）固有種。
サポジラ (M. zapota)
Mimusops (ミムソプス属):
ミサキノハナ (M. elengi)
クンメルバラタ (M. kummel)
シムペリバラタ (M. laurifolia)
Palaquium (オオバアカテツ属):
ブルキガッタパーチャ (P. burckii)
インドガッタパーチャ (P. ellipticum)
オオバアカテツ (P. formosanum)
グッタペルカノキ (P. gutta)
ヘキサガッタパーチャ (P. hexandrum)
カラック (P. karrak) - カロリン諸島（ポンペイ島）固有種。
ルソンガッタパーチャ (P. luzoniense)
シロガッタパーチャ (P. obovatum)
マルバガッタパーチャ (P. ridleyi)
エナシガッタパーチャ (P. rostratum)
Payena:
スンデノキ (P. leerii)
ルシダスンデ (P. lucida)
ニャトードリアン (P. maingayi)
ニャトーソンデック (P. obscura)
Planchonella (アカテツ属):
ムニンノキ (P. boninensis)
クサイアカテツ (P. micronesica) - カロリン諸島のコスラエ島固有種。
アカテツ (P. obovata)
ニャトーナンカクニン (P. malaccensis)
ホワイトプランチョネラ (P. kaernbachiana)
レッドプランチョネラ (P. torricellensis)
P. australis
P. contermina
P. costata
P. cotinifolia
P. eerwah
P. kaalaensis
P. myrsinoides
Pouteria (オオミアカテツ属):
ムナ (P. adolfi-friedericii)
オサン (P. altissima)
アビウ (P. caimito)
カニステル (P. campechiana)
ルクモ (P. lucuma)
P. pierrei
オオミアカテツ (P. sapota)
P. superba
ミドリサポテ (P. viridis)
Sideroxylon:
アルガンノキ (S. spinosum)
Synsepalum (フルクリコ属):
ミラクルフルーツ (S. dulcificum)
Tieghemella:
ドウカ (T. africana)
マコレ (T. heckelii)
Vitellaria (シアーバターノキ属):
* シアーバターノキ (V. paradoxa)
これらの属と種は、アカテツ科の多様性を示す一部に過ぎません。アカテツ科の植物は、私たちの生活に密接に関わっており、その保全と持続可能な利用が求められています。
特徴
アカテツ科の植物は、葉が単葉でらせん状に配列しているのが特徴です。花は両性花であり、子房は上位に位置しています。果実は液果となるものが多く、多様な形状や色合いを持っています。これらの特徴は、アカテツ科の植物を他の科と区別する上で重要なポイントとなります。
利用
アカテツ科の植物は、その多様性から多くの用途に利用されています。特に、乳液から得られる樹脂は、グッタペルカやチクルといった工業原料として重要です。グッタペルカノキはグッタペルカの、サポジラはチューインガムの原料であるチクルを採取するために利用されます。また、サポジラやスターアップルのように、熱帯地域で食用とされる果樹も多数あります。
種子に含まれる油脂も重要な資源であり、モロッコ南西部に見られるアルガンノキからは、食用や化粧品用のアルガン油が採取されます。その他、モアビ、マコレ、アニグレなどの木材は、建築材料や家具の製造に利用されており、東南アジア産のニヤトーも同様に木材として広く利用されています。ニヤトーは複数の樹種を指す総称として用いられ、パラキウム属だけでなく、Donella属、マドフカ属、Payena属、アカテツ属など、多くの属の複数の種を含みます。マコレやモアビはサクラの代替材として、ニヤトーは色合いが似ていることから「洋桜」や「アフリカンチェリー」として取引されることがあります。
主な属
以下に、アカテツ科の主な属とそれぞれの代表的な種を挙げます。分類はGovaerts et al. (2019) に基づいています。
Autranella:
ムクルング (A. congolensis) - ガボン、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国に分布する。
Baillonella:
モアビ (B. toxisperma) - ガボンとコンゴに分布する。
Breviea:
アポベアウ (B. sericea) - コートジボワールに分布する。
Chrysophyllum (オーガストノキ属):
スターアップル (C. cainito)
ジャマイカスモモ (C. oliviforme subsp. oliviforme)
Diploknema:
インドバターノキ (D. butyracea)
Donella:
ヒメカイニット (D. lanceolatum)
Gambeya:
アフリカスターアップル (G. albida)
G. africana
ロンギ (G. beguei)
G. boiviniana
G. lacourtiana
アカアニングエリー (G. perpulchra)
G. subnuda
Inhambanella:
ヘンリクバラタ (I. henriquesii)
Lecomtedoxa:
オコラングマ (L. klaineana)
Letestua:
コンゴタリ (L. durissima)
Madhuca (マドフカ属):
ビティス (M. betis)
モワ (M. longifolia)
イリッペ (M. longifolia var. latifolia)
ニャトーカチャウ (M. motleyana)
マラバルバタノキ (M. neriifolia)
マドゥカ (M. utilis)
Manilkara (マニルカラ属):
バラタゴムノキ (M. bidentata)
アマゾンバラタ (M. bidentata subsp. surinamensis)
サウパプア (M. fasciculata)
カロリンアカテツ (M. hoshinoi) - カロリン諸島（ポンペイ島）固有種。
パライ (M. hexandra)
マサランデューバ (M. huberi)
サワノキ (M. kauki)
モーハ (M. littoralis)
モンギンザ (M. mabokeensis)
ウドイド (M. udoido) - カロリン諸島（パラオ）固有種。
サポジラ (M. zapota)
Mimusops (ミムソプス属):
ミサキノハナ (M. elengi)
クンメルバラタ (M. kummel)
シムペリバラタ (M. laurifolia)
Palaquium (オオバアカテツ属):
ブルキガッタパーチャ (P. burckii)
インドガッタパーチャ (P. ellipticum)
オオバアカテツ (P. formosanum)
グッタペルカノキ (P. gutta)
ヘキサガッタパーチャ (P. hexandrum)
カラック (P. karrak) - カロリン諸島（ポンペイ島）固有種。
ルソンガッタパーチャ (P. luzoniense)
シロガッタパーチャ (P. obovatum)
マルバガッタパーチャ (P. ridleyi)
エナシガッタパーチャ (P. rostratum)
Payena:
スンデノキ (P. leerii)
ルシダスンデ (P. lucida)
ニャトードリアン (P. maingayi)
ニャトーソンデック (P. obscura)
Planchonella (アカテツ属):
ムニンノキ (P. boninensis)
クサイアカテツ (P. micronesica) - カロリン諸島のコスラエ島固有種。
アカテツ (P. obovata)
ニャトーナンカクニン (P. malaccensis)
ホワイトプランチョネラ (P. kaernbachiana)
レッドプランチョネラ (P. torricellensis)
P. australis
P. contermina
P. costata
P. cotinifolia
P. eerwah
P. kaalaensis
P. myrsinoides
Pouteria (オオミアカテツ属):
ムナ (P. adolfi-friedericii)
オサン (P. altissima)
アビウ (P. caimito)
カニステル (P. campechiana)
ルクモ (P. lucuma)
P. pierrei
オオミアカテツ (P. sapota)
P. superba
ミドリサポテ (P. viridis)
Sideroxylon:
アルガンノキ (S. spinosum)
Synsepalum (フルクリコ属):
ミラクルフルーツ (S. dulcificum)
Tieghemella:
ドウカ (T. africana)
マコレ (T. heckelii)
Vitellaria (シアーバターノキ属):
* シアーバターノキ (V. paradoxa)
これらの属と種は、アカテツ科の多様性を示す一部に過ぎません。アカテツ科の植物は、私たちの生活に密接に関わっており、その保全と持続可能な利用が求められています。
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