トニービン

トニービン (Tony Bin)

トニービンは、アイルランドで誕生し、イタリアで訓練を受けた競走馬です。彼は27年ぶりに凱旋門賞を制した歴史的な馬であり、その後、日本で種牡馬としても成功を収めました。

競走馬時代

トニービンは、アイルランドのセリ市で約65万円（当時の日本円）でイタリアの実業家ルチアーノ・ガウッチに購入され、調教師はイタリア人のルイジ・カミーチでした。彼の現役時代（1985年から1988年）には、27戦15勝という素晴らしい成績を収めました。

デビュー戦で優勝を果たし、1986年にはグランクリテリウムで3着となるも、4歳まではダービーイタリアーノで4着、イタリア大賞で3着、といった善戦が続きます。しかし、5歳になるとミラノ大賞典やジョッキークラブ大賞で4連勝し、フランスとイギリスに遠征。サンクルー大賞ではセントレジャーステークスの勝ち馬ムーンマッドネスを抑えて2着に入るなど、着実に実力を示しました。

特に注目すべきは、1988年の凱旋門賞での快挙です。このレースでは11頭立ての11番人気という不利な立場から、キャッシュ・アスムッセン騎手の巧みな騎乗によって驚異的な走りを見せ、1番人気のムトトをクビ差で抑え優勝。勝ちタイムは凱旋門賞史上2位の2分27秒3を記録し、イタリア国内で大いに盛り上がる一因となりました。

ジャパンカップ

その後の活躍が評価され、トニービンはジャパンカップに招待されました。これが現役の最後のレースとなる日本遠征でした。アリタリア航空が特例として彼の輸送に手を上げ、このレースは「四大陸決戦」として注目を集めました。調教師のカミーチは勝利を宣言し、ライバルとして日本のタマモクロスを挙げました。

レース当日は、スローペースの中を中団から進出したものの、最終直線での伸びがなく結果は5着。トニービンはレース中に骨折をしており、これが彼の競走馬生活の幕を閉じることになりました。

種牡馬としての活躍

引退後、トニービンは日本の社台グループにより購入され、種牡馬として新たなスタートを切りました。1994年には日本リーディングサイアーに輝くなど、多くの名馬を輩出。彼の産駒は特に東京競馬場との相性が良く、GI競走のほとんどがこの競馬場での勝利となっています。特に東京競馬場では、産駒のGI勝ち星のうち11勝を挙げ、この成績は圧倒的とされています。

しかし2000年3月に急性心不全で亡くなるまでの間、彼の産駒はさまざまな活躍を見せました。特に差しや追い込みが得意でスピードこそないものの、後方からの長いスパートで差し切る姿勢が顕著でした。ダートでは無難にこなす程度でしたが、実質的には芝向きでした。

主な産駒

トニービンの産駒には、多くのGI級競走優勝馬が存在します。特にベガ（桜花賞、優駿牝馬）、サクラチトセオー（天皇賞（秋））、エアグルーヴ（優駿牝馬）など、数々の名馬が彼の血を受け継ぎ、競馬界で輝かしい成績を収めました。

彼の血統は今もなお競馬界に影響を与えており、トニービン系種牡馬として存続の危機にある現在でも、その貢献は計り知れません。特に後の世代に繁栄をもたらす種牡馬たちが活躍し続けることを、競馬ファンは心待ちにしています。

もう一度検索