トニー・カンゾネリ

トニー・カンゾネリ（Tony Canzoneri）は、1908年11月6日に生まれ、1959年12月9日にその生涯を終えたアメリカ合衆国のプロボクサーです。彼はボクシング史において、史上2人目となる3階級制覇（フェザー級、ライト級、スーパーライト級）という偉業を達成したレジェンドとして知られています。

ルイジアナ州で生を受けたカンゾネリは、幼い頃に家族とともにニューヨーク州ブルックリンに移り住みました。この地でアマチュアボクシングの世界に入り、その才能を開花させます。16歳という若さでニューヨーク州王者となるなど、将来を嘱望される存在でした。

1925年7月24日、17歳でプロのキャリアをスタートさせた彼は、瞬く間に頭角を現します。プロ転向後、間もなく世界王座への挑戦の機会を得ますが、初期は苦杯をなめることとなりました。

1927年3月26日、NBA世界バンタム級王座決定戦でバド・テイラーと対戦。引き分けに終わり、惜しくも王座獲得はなりませんでした。同年6月24日に行われたテイラーとの再戦でも判定負けを喫し、この階級のベルトには手が届きませんでした。

しかし、カンゾネリの真骨頂はここからでした。同年10月24日、NYSAC世界フェザー級王座決定戦でジョニー・ダンディと対戦し、見事3-0の判定勝利を収め、プロキャリア初となる世界王座を獲得します。

さらに1928年2月10日には、フェザー級王者としてNBA世界バンタム級王者ベニー・バスとの王座統一戦に臨み、判定勝ちでNBAバンタム級王座も手中に収めます。しかし、同年9月28日にはアンドレ・ルーチスに判定で敗れ、このNBAバンタム級王座から陥落しました。

階級を上げたカンゾネリは、世界ライト級王座を狙います。1929年8月2日、当時の王者サミー・マンデルに挑みますが、1-2の僅差判定で敗れ、王座獲得はなりませんでした。続く1930年1月17日のジャック・キッド・バーグ戦でも判定負けを喫します。

しかし、カンゾネリは諦めませんでした。1930年11月14日、再び世界ライト級王座に挑戦。王者アル・シンガーを相手に、開始早々の初回KOで勝利を収め、見事ライト級の頂点に立ち、自身2つ目の階級制覇を達成しました。

そしてボクシング史に名を刻む瞬間が訪れます。1931年4月24日、自身が保持するライト級王座と、かつて敗れたジャック・キッド・バーグが持つ世界スーパーライト級王座を懸けた異例のダブルタイトルマッチが実現。この注目の再戦でカンゾネリは強敵バーグを3回KOで下し、史上2人目となる3階級制覇という歴史的快挙を成し遂げました。

二冠王者となった彼は、ライト級とスーパーライト級の両階級で防衛戦を重ねました。1931年9月10日にはバーグとのラバーマッチに判定で勝利し、両王座を防衛。同年10月29日にはフィリー・グリフィンからスーパーライト級王座を守り、11月20日にはキッド・チョコレートを退けライト級王座を防衛するなど、その強さを見せつけました。

しかし、順風満帆なキャリアにも陰りが見え始めます。1932年1月18日、ジャッキー・シャディックに判定負けを喫し、スーパーライト級王座から陥落。同年7月18日の再戦でも王座返り咲きは叶いませんでした。

それでもカンゾネリは不屈の精神で立ち上がります。1933年5月21日、シャディックから王座を奪っていたバトリング・ショウに挑戦し、3-0の判定で勝利。再び世界スーパーライト級王座を獲得し、見事な返り咲きを果たしました。

同年6月23日、バーニー・ロスとの対戦で判定負けを喫し、保持していた両王座（ライト級とスーパーライト級）を失います。9月12日のロスとの再戦でも僅差の判定で敗れ、二冠を取り戻すことはできませんでした。

キャリア晩年に差し掛かっても、カンゾネリの闘志は衰えませんでした。1935年5月10日、ルー・アンバースとの世界ライト級王座決定戦に勝利し、再びライト級王座を獲得。キャリア2度目のライト級王座返り咲きを果たします。

しかし、1936年9月3日のアンバースとの再戦で判定負けを喫し、王座から陥落。1937年5月7日のラバーマッチでも再び敗れ、ライト級王座への3度目の戴冠はなりませんでした。

数々の激戦を戦い抜いたカンゾネリは、1939年11月1日の試合を最後にリングを去り、現役を引退しました。

プロキャリアで彼は世界フェザー級王座（防衛0度）、世界ライト級王座（1期目に4度、2期目に1度の防衛）、世界スーパーライト級王座（1期目に4度、2期目に0度の防衛）を獲得しました。複数階級で頂点を極め、激動の時代を駆け抜けたトニー・カンゾネリは、ボクシング史における偉大なチャンピオンとしてその名を永遠に刻んでいます。

もう一度検索