トビラ

ゆず 3rdアルバム『トビラ』：転換期を映す重厚なサウンド

2000年11月1日、セーニャ・アンド・カンパニーより発売されたゆずの3枚目のオリジナルアルバム『トビラ』は、バンドの転換期を象徴する作品として知られています。同日、ゆずのラジオ番組『ゆずのオールナイトニッポン』が最終回を迎え、音楽活動に専念することを発表したことも記憶に新しいでしょう。

このアルバムは、当時、今後の活動方向に悩んでいた北川悠仁の葛藤が色濃く反映されています。インタビューでは「重いアルバム」と表現されており、実際、他のアルバムとは異なる、暗く、硬派でメッセージ性の強い楽曲が多く収録されていることが特徴です。アルバム制作中には、グループの解散も検討されたほど、ゆずにとって大きな転換点となる作品でした。

楽曲は、シングル曲に加え、ドラマや映画の主題歌、高校ラグビー大会のイメージソングなどバラエティに富んでいます。それぞれの楽曲に込められた想いは、ツアーパンフレット『トビラ』に掲載された、メンバーによる楽曲解説からも読み取ることができます。

チャート成績と収録楽曲

『トビラ』は発売初週に50.9万枚という自身最高の売上を記録し、その後もロングヒットを続けました。『ゆずえん』『ゆず一家』に続く、ゆずの代表的なヒットアルバムとなりました。

収録楽曲は、ドラマ『涙をふいて』の主題歌候補として北川が制作した「幸せの扉」、同ドラマの主題歌となった「飛べない鳥」、高校ラグビー大会イメージソング「日だまりにて」、少年と仮面の物語を描いた「仮面ライター」、友人の死を歌った「ガソリンスタンド」、社会風刺的なメッセージを含む「何処」、アルバムバージョンで収録された9枚目のシングル「嗚呼、青春の日々」、短いながらも明るい雰囲気の「気になる木」、映画『十五才 学校IV』主題歌の「シャララン」、岩沢が実家を出た際に作った「新しい朝」、8枚目のシングル「心のままに」、ジョン・レノンへのオマージュが込められた「午前九時の独り言」など、多様な楽曲が収録されています。特に「何処」は、ゆずの楽曲では珍しい6分を超える長さで、北川の語りパートも含まれています。

制作陣と演奏

アルバム制作には、ゆずの二人に加え、数多くのミュージシャンが参加しました。

主な参加ミュージシャン:

寺岡呼人：プログラミング、ベース、ギター、コーラスなど
向笠高章：プログラミング
上原裕、小田原豊、宮田繁男、佐野康夫：ドラムス
美久月千晴、藤井裕、松原秀樹：ベース
中西康晴、長池秀明：キーボード
藤井謙二、松尾和博、藤田顕：ギター
三沢またろう：パーカッション
リクオ：アコーディオン
阿部雅士チーム：ストリングス＆ブラス
阿部雅士：ストリングス＆ブラスアレンジ

この豪華な布陣によって、多様なサウンドと豊かな表現力で彩られた『トビラ』は、ゆずの音楽的成長と、その後の活動における大きな転換点を示す、重要な作品と言えるでしょう。複雑な感情やメッセージが込められた楽曲群は、聴く者の心に深く響く、ゆずの代表作の一つです。

もう一度検索