トマス・ブルース (第7代エルギン伯爵)

第7代エルギン伯爵トマス・ブルースの生涯と業績

トマス・ブルース（1756年7月20日 - 1841年11月14日）は、第7代エルギン伯爵かつ第11代キンカーディン伯爵であり、イギリスの著名な政治家、外交官、そして歴史に名を残した貴族です。彼の生涯は、単なる政治的功績に留まらず、文化財の移転という物議を醸す業績によって特徴づけられています。特に、ギリシャのパルテノン神殿から剥ぎ取った浮彫り壁画、「エルギン・マーブル」に関する行動は、彼を文化的論争の中心に置くこととなりました。

幼少期から青年期

トマス・ブルースは1766年にスコットランドのエルギンに生まれました。父チャールズ・ブルースの死去により、彼は5歳という若さでエルギン伯爵の地位を継承しました。成長に伴い、ハーロー校、ウェストミンスター校、さらにはセント・アンドルーズ大学で教育を受けました。ここでは、ギリシア・ローマ古典に関心を持ち、特にギリシア悲劇の研究で賞を受けるなどして学びました。

軍と外交の道へ

1785年には陸軍に入隊し、その後、スコットランド貴族の代表として議会に参加し、1790年にはオランダに派遣されるなど、多岐にわたって活躍しました。外交のキャリアは着実に進み、1792年からは駐ブリュッセル公使、1795年には駐プロイセン公使に就任。さらには、駐オスマン帝国大使としても任務を果たしたのです。彼の外交活動はイギリスの国益に貢献し、オスマン帝国との関係を強化しました。特に、1801年にはフランス軍に対抗するためにオスマン帝国に赴き、イギリス軍に助言を行うことで、戦闘における勝利に寄与しました。

エルギン・マーブルとその影響

トマス・ブルースの名が広く知られるようになったのは、オスマン大使としての在任中にパルテノン神殿から浮彫り壁画を持ち帰ったことである。彼は1802年から3度にわたりオスマン皇帝セリム3世の許可を得て、歴史的な彫刻を剥ぎ取りました。この行為は、彼自身の資金で行われ、非常に大きな経済的負担となったため、結局大英博物館にこれを売却せざるを得なくなりました。

エルギン・マーブルは彼の時代において、古典芸術の評価を一変させる出来事となり、文化財保護の議論を引き起こしました。特に詩人バイロンは、彼を強奪者として批判し、『ミネルバの呪い』を通じて文化財泥棒としてのイメージを強調しました。しかし、その一方で、彼の行動は価値ある文化財を守る手段とも考えられていたため、賛否が分かれることとなりました。

晩年と評価

彼は1820年から1841年にかけて再びスコットランド貴族の代表として貴族院に座し、国政に関与しました。1841年にパリで亡くなった後、その父の爵位は息子のジェイムズ・ブルースが継承しました。

トマス・ブルースの行動は、歴史的にも文化的にも大きな影響を与え、彼の業績に対する評価は現在も続いています。特に、「エルギン・マーブル」を巡る議論は、文化資産の所有権や倫理に関する重要なテーマを提起し続けています。この貴族の生涯を振り返ることは、歴史の中で文化財の価値やその保護の方法について考える一助となるでしょう。

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