トム・ミックス

トーマス・エドウィン・ミックス：西部劇の伝説

トーマス・エドウィン・ミックス（Thomas Edwin Mix、1880年1月6日 - 1940年10月12日）は、アメリカの映画俳優であり、初期の西部劇映画において重要な役割を果たしました。彼は生涯で291本もの映画に出演し、そのほとんどがサイレント映画でした。ミックスはハリウッド初の西部劇スターとして、そのジャンルを確立しました。

若年期

ミックスはペンシルベニア州で生まれ、幼い頃から馬への愛情を育みました。学校卒業後は農場で働き、1898年には米西戦争でアメリカ陸軍に入隊しました。この際、ミドルネームをエドウィンに改名しています。軍を除隊後、ミックスは短期間で二度の結婚と離婚を経験し、1909年にオリーヴ・ストークスと結婚し、娘ルースが誕生しました。

1905年には、セオドア・ルーズベルト大統領の就任式パレードに騎手として参加しました。その後、オクラホマ州に移り住み、バーテンダーなど様々な職に就いた後、大規模な牧場で働き、そこで乗馬や射撃の技術を磨き、全米大会で優勝するほどの腕前となりました。また、フリーメイソンの会員でもありました。

映画界でのキャリア

1910年、ミックスはワイルド・ウエスト・ショーの運営者から映画出演のオファーを受けました。最初は俳優業に興味がなかったものの、短編映画に出演後、セリグ社に所属し、俳優としてのキャリアをスタートさせました。

1912年にはカルガリー・スタンピードを立ち上げ、その後は巡回公演を行いました。1913年にセリグ社に復帰し、俳優兼監督として活躍しました。1914年からは自身の作品の脚本、監督、主演を務めるようになりました。しかし、第一次世界大戦の影響で海外での映画公開が難しくなると、セリグ社は財政難となり、ミックスはフォックス・フィルムと契約を結びました。

セリグ社時代には、女優ヴィクトリア・フォードと恋に落ち、1917年に離婚、翌年再婚しました。2人の間には娘トマシーナが誕生しました。

1920年代の活躍

フォックス社移籍後、ミックスは160本以上のカウボーイ映画を製作しました。これらの作品は、アクションを重視した内容で、ヒーローが活躍する定番の西部劇スタイルを確立しました。彼の映画は多くの子供たちに影響を与え、愛馬トニーも有名になりました。ミックスは自らスタントを行い、怪我をすることも少なくありませんでした。

1913年、アリゾナ州に牧場を購入し、映画のロケ地としても活用しました。また、プレスコットのロデオ大会でも成功を収めました。フォックス社での報酬は週給17,000ドルまで上昇しましたが、1927年になると低予算の模倣映画が増え、ミックスはフォックス社との契約を更新しませんでした。その後、ヴォードヴィル公演ツアーを経て、FBOと契約しましたが、以前ほどの人気は得られず、契約を解除しました。

ミックスは、西部劇のセットを訪れていたワイアット・アープと親しくなり、アープの葬儀では喪主を務めました。

1930年代以降

RKOを退社後、再びヴォードヴィル公演ツアーに戻り、その後サーカス団に所属しました。世界恐慌で財産を失ったものの、1931年にユニバーサル・ピクチャーズと契約し、9本のトーキー映画に出演しました。しかし、怪我や病気により映画への出演に消極的になり、契約を解除しました。

その後、サーカス団を設立し、映画プロデューサーとの契約で西部劇シリーズ「The Miracle Rider」に出演しました。この作品は興行的に成功しましたが、これがミックスの最後の映画出演となりました。

1935年には名誉テキサス・レンジャーに任命されました。その後はサーカス団の経営に専念し、ヨーロッパにも渡りました。ミックスは26年間のキャリアで、巨額の財産を築いたとされています。

ラジオ番組

1933年からは、ラジオドラマシリーズ「トム・ミックス・ラルストン・ストレート・シューターズ」が放送されました。ミックス自身は出演しませんでしたが、番組は1950年代まで続く人気シリーズとなりました。

死去

1940年10月12日、ミックスは自動車事故で亡くなりました。60歳でした。葬儀には数千人が参列し、彼の遺体はグレンデールのフォレスト・ローン・メモリアル・パークに埋葬されました。事故現場には記念碑が設置されています。

遺産

ミックスは、ロナルド・レーガンやジョン・ウェインなどの後進に影響を与え、「カウボーイの帝王」として知られていました。特にウェインは、ミックスの紹介で映画界入りを果たしました。しかし、ミックスの出演作品の多くは失われており、現存するのはごく一部です。

映画界への貢献を称え、ハリウッド・ウォーク・オブ・フェームに星が設置され、グローマンズ・チャイニーズ・シアターには手形と愛馬の蹄の形が刻まれたセメントタイルが埋め込まれています。また、全米カウボーイ・ウェスタン遺産博物館に殿堂入りを果たし、デューイーにはトム・ミックス博物館があります。

漫画への登場

1940年代から1950年代にかけて、ミックスを主人公とする西部劇漫画が多数描かれました。ラジオ番組のスポンサーであったラルストン社も漫画雑誌を発行しました。

フィルモグラフィー

ミックスは、セリグ・ポリスコープ、フォックス・フィルム、FBO、ユニバーサル・ピクチャーズ、マスコット・ピクチャーズで数多くの映画に出演しました。これらの作品は、彼の西部劇スターとしての地位を確固たるものにしました。

結論

トーマス・エドウィン・ミックスは、初期の西部劇映画を代表するスターであり、その影響は後世にまで及んでいます。彼の活躍は、映画史に深く刻まれています。

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