トヨタ・94C-V

トヨタ・94C-Vの概要

トヨタ・94C-Vは1994年に開催されたル・マン24時間レースに参加するために開発されたプロトタイプレーシングカーです。しかし、この車両は新車ではなく、1991年に使用されたJSPC参戦用グループCカー、91C-Vを改良したものです。これに関連する他のモデルには、1992年および1993年のル・マン24時間レースに出場した92C-Vおよび93C-Vがあります。

1993年をもってグループC規定が終了したため、1994年のレースではLMP（ルマンプロトタイプ）およびLMGTが新たに設けられた規定となりました。その結果、トヨタ94C-Vは前年のクラス優勝を果たした93C-Vをもとに、LMP1規定に合わせて内容が変更され、エアリストリクターの径を縮小したエンジンが搭載されるなどの調整が行われました。これによりパワーは550PSに減少し、前年に比べるとラップタイムは約10秒遅れとなりました。

戦績

1994年にはトヨタがワークスとしての参戦を行わなかったため、サードとトラストのチームから2台の94C-Vがエントリーされました。サードチームの前年のカテゴリー2におけるクラス優勝の成果も影響し、トヨタ94C-Vは優れたパフォーマンスを期待されていました。しかし、LMGT1規定が特例を設けていたため、ポルシェ・962の公道仕様が製作され、ダウアー・962LM/ポルシェがエントリーチームとして参戦することになりました。

予選ではクラージュC32/ポルシェがポールポジションを獲得しましたが、レースは94C-Vとダウアーの間での熾烈な争いとなりました。レースが進行する中、トラストの94C-Vはトランスミッションのトラブルで遅れを取りますが、サードの94C-Vは順調に周回を重ね、残り1時間15分の時点で2位のダウアーに対して9分の差をつける位置にいました。日本車による勝利が期待されましたが、メインストレートでシフトリンケージのトラブルが発生し、ドライバーのジェフ・クロスノフは急遽手動でミッションを切り替えなければなりませんでした。この修理に際し、サードの94C-Vはダウアーに抜かれ、最終的には3位に後退しました。エディ・アーバインによる奮闘にもかかわらず、トヨタにとってル・マン初優勝は達成されませんでした。

その後、サードチームは鈴鹿1000kmに参戦する予定でしたが、ライバルのダウアー・962LMが直前にキャンセルし、結果的に独走状態でのレースとなったものの、トラブルに見舞われてリタイヤしました。これがトヨタのCカー（改修されたLMP1規定の車両）が出場した最後のレースとなります。その後もR36Vエンジンは再登場し、1998年のトヨタ・GT-One TS020に搭載されました。

サードの94C-Vは、その高いパフォーマンスを示したことが評価され、サルト・サーキット近隣の博物館に寄贈され、今でも展示されています。此外、2021年のトロフィー返還セレモニーでは復元され、自走する場面が見られました。

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