トヨタ・G16E-GTS

トヨタ・G16E-GTSエンジンの詳説

トヨタ自動車が開発したG16E-GTSは、GRヤリスに搭載される水冷直列3気筒のターボガソリンエンジンです。このエンジンは、1,618 ccの排気量を持つDOHC（ダブルオーバーヘッドカムシャフト）設計が特徴で、環境性能と高効率を意識した設計がなされています。さらに、GRヤリスの競技志向に特化した形で開発されているため、通常のダイナミックフォースエンジンとは異なる特性を持っています。

エンジン設計の背景

G16E-GTSエンジンは、トヨタのモータースポーツ部門で開発され、世界ラリー選手権（WRC）での優れたパフォーマンスを求められています。このエンジンは、「ダイナミックフォース・スポーツエンジン」としての初号機であり、ダブル流（縦の渦流）による燃焼を改善するための高度な技術が採用されています。特に、GRヤリスはダイナミックフォースエンジンを基にしながらも、気筒数は同じであってもボアストローク比や機構に大きな違いを持っています。

エンジン性能と仕様

G16E-GTSは、272 PS（約268馬力）を6,500 rpm時に発生し、最大トルクは370 N･mを3,000 - 4,600 rpmの幅で発揮します。この数値は、トヨタのもつエンジン技術の集大成であり、わずか109 kgの乾燥重量でこれらを実現しています。さらに、272 PSの出力は、1リットルあたり168 PSを超えており、非常に高い出力密度を誇っています。

特に注目すべきは、ターボチャージャーの性能です。G16E-GTSはボールベアリングターボを搭載し、レスポンスの向上と高効率のスーパーチャージを提供しています。このターボは、エキゾーストマニホールドと一体型であるため、軽量化と耐久性の向上にも寄与しています。

機構と工夫

エンジンの可変バルブタイミング機構には「VVT-i」が搭載されており、これは燃焼効率の向上に貢献しています。さらに、各部品の精密な設計と軽量化が進められており、特にピストンの軽量化は開発陣にとって大きな課題でした。高出力にも耐え得る軽量ピストンを作るために、特別な材料が用いられています。実際、これにより優れた耐久性を保ったまま低振動を実現することができました。

また、冷却技術も向上しており、各部の熱管理が効果的に行われています。さらには、エンジンブロックの構造も独自に設計されており、素材にはアルミニウムが使用されています。これにより、軽量化が進み、大幅なパフォーマンス向上が実現されています。

開発経緯と将来展望

GRヤリス用に専用設計されたG16E-GTSエンジンの開発は、豊田章男社長が掲げる『競技に耐えられるエンジン』というビジョンの下で進められました。開発チームは、欧州での徹底的な市場調査を行い、競争力を持つエンジンを目指しました。このエンジンはスバルEJ20型エンジンを上回る性能を持ち、トヨタのレース車両に適しています。

その後、GRカローラなどの新たなモデルへの搭載が見込まれる中でG16E-GTSは進化を重ねており、他のモータースポーツでの使用も視野に入れています。これにより、今後もトヨタはエンジン技術の革新とモータースポーツへの貢献を続けていくことでしょう。

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