トヨタ・TS010

トヨタ・TS010

トヨタ・TS010は、1991年にトヨタが手掛けたスポーツカーで、主にスポーツカー世界選手権（SWC）およびル・マン24時間レースでの成功を収めることを目指して開発されました。この車両は、新たなグループC規定に基づいて設計され、トヨタのモータースポーツにおける重要なマシンの一つとなっています。

マシンの概要

TS010の名称は、これまで使用されていたターボエンジン搭載車の「C-V」に代わり、「トヨタ・スポーツ」を指す「TS」から来ています。この車両は、トヨタのエンジンとギヤボックスを自社で設計し、シャシー部分はTRDが担当しました。モータースポーツにおける技術の違いを補うため、開発チームはコンサルタントとしてトニー・サウスゲートを迎えました。

エンジンは、当時のF1と同様の3.5L自然吸気エンジンで、5バルブ・V型10気筒の設計が採用されました。初期試作型の出力は約480馬力に過ぎませんでしたが、実戦での出力は最高で750馬力に達しました。車体構造にはカーボンが使用されており、冷却機構も工夫がなされています。特にTS010は、フロントラジエーターを採用し、独自のエアロダイナミクスを実現しました。車両デザインにはウイングカー構造が採用され、高速時には200 mph（約320 km/h）で4トン以上のダウンフォースを生む性能を持っていました。

開発の背景

TS010の開発は1989年に始まりました。初期段階では、エンジンチームが低重心化を図る中、シャシーチームは高ダウンフォースを求める設計をしていました。結果的に、1990年に完成した車体は、不要な高重心を抱えることとなりました。その後、車両設計は1989年からの旧態依然としたものでなく、より現代的なデザインに再設計されることになりました。

1991年には、TS010がシェイクダウンを経て、実戦投入を果たす前に様々なテストを重ね、グッドイヤー製のタイヤを選定しました。

成績と展望

TS010は、1991年にオートポリスで特別参戦を果たし、1992年からはSWCにフル参戦しました。初戦モンツァでは、ウィナーを獲得したものの、その後のレースでは特に技術革新を行うことなく、プジョーに対して劣勢となっていきました。

特にル・マン24時間レースでは、天候による不運や機械のトラブルが影響し、2位で完走したものの優勝を逃しました。このように、TS010はトヨタの期待を十分に実現することができなかったものの、ドライバーたちからは高い評価を受けていました。選手たちは、このマシンの操縦感や性能に魅力を感じ、「最高のマシン」と称える意見もありました。

その他の情報

TS010はその後のレースで各種部品が流用され、全日本GT選手権などで活躍することになりました。また、トヨタはル・マンでの成功に向け、さらなる改良やテストを重ねることとなり、1993年にはトランスミッションの信頼性向上や新たなエンジン出力を伴った改良を加えていきました。こうした試みは、トヨタのモータースポーツにおける進化の一端を示すものだと言えるでしょう。

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