トライアンフ TR4

トライアンフTR4：進化と革新のスポーツカー

トライアンフTR4は、英国のトライアンフ・モーター・カンパニーが1961年から1965年にかけて製造した2シーターのオープントップスポーツカーです。TR3の後継モデルとして登場したTR4は、そのスタイリッシュなデザインと向上した性能で、世界中のスポーツカー愛好家から高い評価を受けました。しかし、その誕生には様々な開発段階と試行錯誤がありました。

開発：試行錯誤とデザインの融合

TR4の開発は1956年前半に開始されました。当時、トライアンフ社は資金不足や主要デザイナーの退社といった課題を抱えていました。しかし、カナダのマッセイ・ハリス社へのトラクター部門売却によって資金繰りが改善されると、新たなデザインの方向性が模索されることになります。

この過程で、イタリア人デザイナーのジョヴァンニ・ミケロッティが起用されました。ミケロッティは、TR3をベースにした「TRドリームカー」（TR3 スペチアーレ）を製作。テールフィンやワイドなフロントグリルなど、当時のアメリカ車風のデザインを取り入れたこのコンセプトカーは、ジュネーブ国際モーターショーで発表され注目を集めました。しかし、量産にはコストがかかり過ぎると判断され、量産化はされませんでした。

その後、ミケロッティはTR3Aをベースにした2つのプロトタイプ、「ゼスト」と「ズーム」を設計。それぞれのプロトタイプには異なる特徴があり、「ゼスト」は車幅いっぱいのボディと独特のヘッドライト配置、「ズーム」はより現代的なデザインと巻き上げ式サイドウィンドウが特徴でした。「ズーム」は、トライアンフが開発していた高性能エンジン「20X」を搭載したレースマシンとしても製作され、ル・マン24時間レースにも出場しました。

これらのプロトタイプの開発を通して得られた知見を基に、最終的にTR4のデザインが決定されました。「ゼスト」をベースにしながらも、「ズーム」の要素を取り入れることで、TR4は洗練されたスタイリングと広いトレッド幅を実現しました。さらに、オプションでハードトップも提供されました。

特徴：洗練されたデザインと性能

TR4のボディは、従来のTRシリーズとは大きく異なるデザインとなりました。高く、角張ったリアボディラインは広々としたトランクスペースを確保し、巻き上げ式サイドウィンドウは本格的なコンバーチブルとしての機能性を高めました。ボンネットには特徴的な「バブル」形状のパワーバルジが配置され、エンジンルーム内のキャブレターをカバーしていました。

シャシーはTR3と基本的な構造は同じでしたが、トレッド幅が拡大され、走行安定性が向上しました。また、オプションでアルミ製、またはスチール製の着脱式ハードトップが用意されました。これは、ポルシェ911/912のタルガトップよりも5年も先行する革新的なシステムでした。

インテリアも改良され、調節可能なベンチレーションや折り畳み式ステアリングコラムなどが採用されました。パワートレインには、排気量が拡大された2138ccの直列4気筒エンジンが搭載され、スムーズな走りを実現。トランスミッションは全ギアにシンクロメッシュが備わり、オプションでオーバードライブも選択できました。サスペンションは、フロントにダブルウィッシュボーン、リアに半楕円リーフスプリングを採用。ステアリングは、ラック＆ピニオン式に変更されました。

生産と販売：世界へ羽ばたくスポーツカー

TR4の生産は1961年7月に開始され、1965年1月まで続けられました。約4万台が製造され、その大半がアメリカを含む海外市場に輸出されました。アメリカ市場では、TR4のスタイリングが受け入れられない可能性を懸念し、TR3のエンジンとトランスミッションを改良した「TR3B」も生産されました。

TR4は、警察車両としても使用された記録があり、その高い性能と信頼性が証明されています。しかし、TR2、TR3、TR6、TR7と比較すると、生産期間が短く、販売台数も少なかったことがわかります。現在でも、多くのTR4が世界中で大切に維持され、走っている姿を見ることができます。

モータースポーツ：輝かしい戦績

TR4は、モータースポーツにおいても高いポテンシャルを発揮しました。特にアメリカでは、カス・カストナー率いるチームが、セブリング12時間レースやSCCA選手権などで数々の勝利を収めました。その活躍は、TR4の性能と信頼性を世界に示すこととなりました。さらに、ラリーカーとしても人気があり、ヨーロッパ各地のビンテージラリーイベントでも活躍しています。

TR4AとダヴGTR4：進化とバリエーション

1965年には、TR4の後継モデルとしてTR4Aが登場しました。TR4Aは、独立懸架式リアサスペンションなど、多くの改良が施されました。また、ロンドンの自動車ディーラー、L.F.ダヴ社は、TR4をベースにしたハードトップクーペ「ダヴGTR4」を製造しました。ハリントン・モーター・ボディワークスがボディ製作を担当したこのモデルは、TR4の利便性を高めた特別なモデルとなっています。

TR4は、その美しいデザインと高い性能、そしてモータースポーツでの活躍により、名車として今もなお多くのファンを魅了し続けています。その歴史と魅力は、これからも語り継がれていくでしょう。

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