ジョヴァンニ・ミケロッティ

ジョヴァンニ・ミケロッティ：イタリアを代表するカーデザイナーの軌跡

ジョヴァンニ・ミケロッティ (1921年10月 - 1980年1月23日) は、20世紀を代表するイタリアのカーデザイナーです。トリノに生まれ、祖父は馬車職人、父はフィアットの鋳物技師という環境で育ちました。彼の才能は若くして開花し、数々の名車デザインを生み出すことで自動車史に名を刻むことになります。

輝かしいキャリアの始まり：スタビリメンティ・ファリーナ時代

1937年、ミケロッティは、カロッツェリア（自動車のボディ製作会社）として名高いスタビリメンティ・ファリーナに見習いデザイナーとして入社します。そこで自動車デザインの基礎とボディ製作技術を習得し、わずか1年後にはチーフデザイナー代理に昇進するほどの才能を発揮しました。

独立と成功：独自のスタイルを確立

1949年、ミケロッティは独立し、「ステューディオ・テクニコ・カロッツェリア・ジョヴァンニ・ミケロッティ」を設立します。アレマーノ、ヴィニャーレ、ギア、ベルトーネといった著名なカロッツェリアのデザインを請け負い、独立した立場で自動車ボディデザインを手がけた最初のカーデザイナーとなりました。この独立により、彼は自身のデザイン哲学を自由に追求することができ、独自のスタイルを確立していくことになります。

ミケロッティデザインの個性：自社作品と主要なクライアント

ミケロッティは自身の名前を冠した数々のデザインを発表しました。フィアット127をベースにしたバギーカー風の「エヴリィ」、フィアット126をベースにしたシティカー「シティ」、ランチア・ベータをベースにした5ドアハッチバック「ミザール」など、その独創性は高く評価されました。また、ダイハツ・タフトの豪華仕様や、ダイハツ・クオーレをベースにした試作車「ミケロッティ・PAC」なども市場に送り出しています。

ミケロッティがデザインした車種は多岐に渡り、そのクライアントリストには、トライアンフ、BMW、日野自動車、フェラーリ、アルピーヌ、マセラティ、マトラなど、世界的に有名な自動車メーカーが名を連ねています。

トライアンフ：ミケロッティとイギリス車の融合

1950年代から、ミケロッティはスタンダード・トライアンフの新型車デザインをほぼ独占的に担当しました。スタンダード・ヴァンガードのフェイスリフトから始まり、ヘラルド、スピットファイア、GT6、TR4、2000、1300、スタッグ、ドロマイトなど、数々のトライアンフ車をデザインし、ブランドイメージの確立に大きく貢献しました。TR6、TR7なども彼の代表作として挙げられます。

ブリティッシュ・レイランド：幅広い車種への貢献

トライアンフの親会社であるレイランドがブリティッシュ・レイランドの一部になると、ミケロッティはBMC 1100のフェイスリフトや、レイランド・ナショナル、レイランド・P76のデザインなども手がけています。

BMW：スポーツセダンのデザイン言語を確立

ミケロッティはBMW 700のデザインから携わり、BMW 2002などノイエクラッセ・シリーズで大きな成功を収めました。彼がBMWスポーツセダンで確立したデザイン言語は、その後もBMWのデザインに大きな影響を与え続けました。

日野自動車：日本車デザインへの貢献

1961年、日野自動車からの依頼で日野・コンテッサの開発に関わります。与えられたのは開発スケジュールと機械レイアウトだけで、デザインはミケロッティの自由な発想に委ねられました。彼はコンテッサ900をベースにした「コンテッサ900スプリント」や、大型トラックのデザインなども手がけ、日本の自動車デザインにも大きな影響を与えています。

その他のメーカー

ランチア、マセラティ、アルピーヌ、プリンスなど、多様なメーカーの車種デザインに携わり、それぞれのブランドの個性を際立たせるデザインを提案しました。

晩年と評価

ミケロッティは1980年に他界しましたが、彼のデザインした車は、その時代を超えて愛され続けています。彼の作品は、洗練されたデザインと優れた機能性を両立させたものであり、今日の自動車デザインにも大きな影響を与え続けています。彼の功績は、自動車デザインの歴史に永遠に刻まれるでしょう。

もう一度検索