トライデント (ミサイル)

トライデント（Trident）

トライデントは、アメリカ海軍で運用される潜水艦発射弾道ミサイル（SLBM）で、正式には艦隊弾道ミサイル（FBM）と呼ばれます。このミサイルは個別誘導再突入体（MIRV）を装備しており、核弾頭を搭載しているのが特徴です。主にアメリカ海軍のオハイオ級原子力潜水艦から発射され、イギリスのヴァンガード級原子力潜水艦でも利用されています。トライデントの開発はロッキード・マーティン・スペース・システムズ社が主導しており、現存する核戦力として重要な役割を果たしています。

トライデントの概要

トライデントは海面下の発射管から発射され、17本のチタニウム合金製容器内の炸薬が点火されることで咄嗟にミサイルが射出されます。生成される爆風のエネルギーは水タンクに導かれ、瞬間的に水を沸騰させることで生じた蒸気の圧力でミサイルを排出します。この過程では、海水の浸入やミサイルの不安定化を防ぐための各種安全メカニズムが働き、必要な条件を整えてからミサイルが発射されます。

発射から数分以内に、ミサイルは低高度軌道に到達し、航法システムに基づく誤差を天測システムが修正します。その後、ミサイルの主コア部分は、個々の目標へ向けたさまざまな速度ベクトルを持つ再突入体に分かれます。また、トライデントには二つの主要なバリエーション、C4（UGM-96A トライデント I）およびD5（UGM-133A トライデント II）があります。これらは技術的に異なる設計を持ちながらも、共にアメリカの潜水艦から運用されるミサイルです。

トライデントの歴史

トライデント I（C4）は1979年に配備され、ポセイドンC3の改良版として開発されました。このミサイルは、射程を延長し、潜水艦の生存性を高めることを目的としていました。トライデント II（D5）は、1990年代に配備され、命中精度の向上を目指した新世代のシステムです。特に、D5はICBMにも匹敵する射程を持つことを狙って設計されており、北大西洋やインド洋からの発射でも高度な迎撃能力をもっています。

技術的特徴

トライデントC4は、最大8発の核弾頭と共に4500キロメートル以上の射程を誇り、C4に続くD5では最大14発搭載可能で、射程は6000海里（約11000キロメートル）に達します。その精度は90メートル前後に及び、アメリカ軍の核戦力において重要な地位を占めています。このため、トライデントは報復攻撃の基幹として機能し、敵のミサイルサイロをターゲットにすることも可能です。

国際的な影響

トライデントは、アメリカとイギリス間での重要な軍事協力の一環として位置づけられ、両国は共同でその運用に取り組んでいます。また、トライデントミサイルは、国際的な核戦略において重要な役割を果たしており、このミサイルシステムの存在は、各国の軍事バランスにも影響を与えています。

最近の動向

2022年には、アメリカ海軍がトライデントD5の寿命延長プログラムを発表し、計画に基づいて既存ミサイルの部品の交換が進められています。これにより、ミサイルシステムの信頼性と持続性がさらに高まる見込みです。トライデントは、将来にわたって核戦力の中核として存在し続けることでしょう。

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