トラック野郎・望郷一番星

トラック野郎・望郷一番星：北海道を舞台に繰り広げられる、友情と人情のロードムービー

1976年（昭和51年）8月7日、東映より公開された『トラック野郎・望郷一番星』は、「トラック野郎シリーズ」の第3作目です。菅原文太演じる主人公・星桃次郎（一番星）と愛川欽也演じる松下金造（やもめのジョナサン）の活躍を中心に、北海道を舞台に痛快なロードムービーが展開されます。

本作は、公開時の配給収入が5億4300万円、最終的には12億2779万円という驚異的な数字を記録し、1976年の邦画配給収入ランキングで第4位にランクインする大ヒットとなりました。その人気の秘密は、派手なトラックレースシーンやユーモラスな会話劇、そして何よりも、桃次郎とジョナサンの強い友情と人情に溢れた物語にあります。

物語の舞台：北海道

物語は、広島の台貫場から始まります。重量オーバーで摘発されそうになったニヒル（松鶴家千とせ）を、桃次郎とジョナサンの機転で救うシーンから、物語は一気に加速していきます。

その後、2人は北海道を目指します。フェリーの中で出会った三上亜希子（島田陽子）に一目惚れした桃次郎は、北海道で様々な出来事に巻き込まれていきます。釧路の漁港では、はまなすお涼（土田早苗）とトラブルを起こし、「カムチャッカ」こと大熊田太郎次郎左衛門（梅宮辰夫）とトラックレースで勝負することになります。

このレースは、北海道の道々を生かしたカムチャッカの戦略と、桃次郎の気迫がぶつかり合う、手に汗握る展開となります。レース後、桃次郎は亜希子と再会し、彼女の牧場で働くことになります。一方、ジョナサンは、お涼の弟・紅夫（小倉一郎）と水屋（貨物利用業ブローカー）の鮫田（草薙幸二郎）とトラブルに巻き込まれます。

人情と友情：様々な人間模様

物語は、桃次郎と亜希子、ジョナサンとその家族、そしてカムチャッカ、お涼など、様々な人間模様が複雑に絡み合いながら展開していきます。桃次郎の優しさに触れ、仔馬の命を救ったことで、亜希子と小宮（永谷吉見）の結婚のきっかけを作ったこと、ジョナサンの家族の温かさ、そして、カムチャッカや周りの人々との友情など、数々のエピソードが描かれています。

特に、宮城県出身のトラック運転手・宮城縣（吉川団十郎）の死をきっかけに、桃次郎は都はるみの盆踊り大会に協力を得ようと奔走するシーンは、本作の感動的なクライマックスの一つです。

しかし、物語はそこで終わるわけではありません。鮫田による金銭トラブル、そして、40トンの生魚の輸送という、時間との闘いを描いたクライマックスシーンは、手に汗握る展開です。桃次郎と仲間たちの連携プレーと、一番星号の驚異的な走りが見どころとなっています。

スタッフ・キャスト

監督は鈴木則文、脚本は野上龍雄と澤井信一郎、音楽は菊池俊輔が担当。主題歌「一番星ブルース」は菅原文太と愛川欽也が歌い上げ、挿入歌「トラック音頭」も作品に彩りを添えています。

豪華なキャスト陣も本作の魅力の一つです。菅原文太、愛川欽也の他、島田陽子、梅宮辰夫、土田早苗、吉川団十郎、春川ますみ、そして都はるみといった、そうそうたるメンバーが出演しています。

作品の評価と影響

『トラック野郎・望郷一番星』は、その興行収入だけでなく、日本映画史においても重要な作品として評価されています。日本の高度経済成長期におけるトラックドライバーの生き様や、人情味あふれる人間ドラマは、多くの観客の心を掴みました。また、本作に登場するアートトラックは、その後の日本のトラック文化にも大きな影響を与えました。

本作は、単なる娯楽映画ではなく、時代背景や社会風俗を反映した、奥深い作品となっています。トラック野郎シリーズの中でも特に人気が高い本作は、今見ても色褪せない魅力にあふれています。

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