トラビス・ジャクソン

1903年 11月2日、アメリカ合衆国アーカンソー州ワルドに生を受けたトラビス・カルヴィン・ジャクソンは、メジャーリーグベースボールの歴史に名を刻む傑出した遊撃手です。右投げ右打ちの内野手として、特に1920年代から1930年代にかけてニューヨーク・ジャイアンツの不動のレギュラーとして活躍しました。その守備は目覚ましいもので、広大な守備範囲と素早く正確な動作から「ストーンウォール（石の壁）」というニックネームで呼ばれました。このニックネームは、まるで壁に投げつけられたボールが瞬時に跳ね返ってくるかのような、彼の機敏な捕球と送球を称えたものです。ジャクソンは、名将ジョン・マグロー監督の下、守備の要としてチームを支えました。

彼のプロ野球人生は1922年に始まりました。サザンリーグのリトルロック球団からニューヨーク・ジャイアンツに入団し、同年には早くもメジャーリーグの舞台にデビューを果たします。入団から3年目にあたる1924年には、遊撃手のレギュラーポジションを獲得。この年は151試合に出場し、守備では101個の併殺を記録するなど、圧倒的な存在感を示しました。打撃でも打率.302を記録し、攻守にわたってチームに貢献しました。

ジャクソンの守備は、多くの選手や評論家から高い評価を得ていました。その広大な守備範囲と機敏な動きは、他の追随を許さないものでした。同時代のスーパースターであるロジャース・ホーンスビーは、トラビス・ジャクソンについて尋ねられた際、「何年も一緒にプレーしたり、対戦したりして彼を見てきたが、守備で失敗したところを一度も見たことがない」とまで語っています。これは、彼の守備がいかに安定しており、信頼に足るものであったかを示す逸話です。

ジャイアンツには1936年まで、実に15シーズンにわたり在籍しました。この間、チームはワールドシリーズに4度進出（1923, 1924, 1933, 1936年）しており、ジャクソンはその中心選手として重要な役割を担いました。打撃面でも、彼は優れた成績を残しています。特に1930年にはキャリアハイとなる打率.339を記録したほか、通算では6度にわたってシーズン打率3割を達成しました。守備記録においても特筆すべきものがあり、1928年と1929年には2年連続で500以上の補殺と、110以上の併殺を記録。これは遊撃手として非常に高い水準を示す数字です。

しかし、選手としてのキャリア終盤に差し掛かる1934年以降は、体の衰えからか、遊撃手としてフル出場することが難しくなり、三塁手として出場する機会が増えました。そして、1936年シーズンの終了後、長年活躍したジャイアンツを放出され、そのまま現役を引退することとなりました。

引退後、トラビス・ジャクソンが再び脚光を浴びたのは1982年のことでした。この年、ベテランズ委員会によってアメリカ野球殿堂入り選手に選出され、その輝かしい功績が改めて称えられました。

晩年は故郷であるアーカンソー州に戻り、1987年 7月27日に83歳でその生涯を閉じました。

トラビス・ジャクソンは、守備の名手としてだけでなく、打撃でも一定の成績を残した攻守兼備の内野手として、野球史にその名を刻んでいます。

主な獲得タイトル・記録:

リーグ最多補殺数（遊撃手）: 4回 (1927, 1928, 1929, 1931年)
リーグ最高守備率（遊撃手）: 2回 (1929, 1931年)
ワールドシリーズ出場: 4回 (1923, 1924, 1933, 1936年)
スポーティングニューズ誌オールスターチーム選出: 3回 (1927, 1928, 1929年)
* オールスターゲーム出場: 1回 (1934年)

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