トランクウィリティー (ISS)
トランクウィリティー（Tranquility）は、国際宇宙ステーション（ISS）の一部として、2010年2月に実施されたSTS-130ミッションで軌道上に運ばれ、結合されたモジュールです。正式名称が決定される前は「ノード3」とも呼ばれていました。ISSの運用において、生命維持機能と他のモジュールを繋ぐ重要なハブとしての役割を担っています。
このモジュールは、欧州宇宙機関（ESA）が開発・製造を担当しました。先に結合されていた「ハーモニー」（ノード2）もESA製であり、トランクウィリティーはハーモニーとほぼ同じ構造を持っていますが、ユニティ（ノード1、米国製）と比較すると全長が長くなっています。トランクウィリティーの最大の特長は、当時宇宙で使用されていた中で最も先進的な生命維持システムを搭載している点です。使用済みの排水をリサイクルして飲料水などに再利用するシステムや、乗員が必要とする酸素を生成する装置が備えられています。さらに、ISS内部の空気を浄化し、成分を監視・制御する空気再生システムも設置されています。乗員が日常的に使用する排水衛生区画、すなわちトイレもこのモジュールに設置されています。これらの生命維持システムの一部は、トランクウィリティーがISSに到着する前から、他のモジュール（デスティニーなど）で仮運用されており、トランクウィリティーの設置後に移設されました。
トランクウィリティーは、他のモジュールとの結合を可能にする共通結合機構を6箇所に有しています。これらの結合部は、電力やデータの伝送、コマンドの送受信、熱や環境の制御、そして乗員の往来といった多様な機能を提供します。ただし、天井側の1箇所は、カナダアーム2の先端に取り付けられるロボット「デクスター」を設置するための改造が施されたため、モジュールを直接結合する機能は備えていません。
トランクウィリティーのISSへの設置は、複雑な手順を経て行われました。当初はユニティの地球側結合部に取り付けられる計画でしたが、変更によりユニティの左舷側に設置されることになりました。設置に先立ち、まずユニティの地球側に結合していた与圧結合アダプタ3（PMA-3）をユニティ左舷側に一時移動させ、船内から配線・配管の改造を行いました。その後、トランクウィリティーをユニティ左舷側に結合しました。大型観測窓モジュールである「キューポラ」は、トランクウィリティーと結合された状態で一緒に打ち上げられました。軌道上で、キューポラはトランクウィリティーの底側（地球側）にある結合部に移設されました。キューポラ移設によって空いたトランクウィリティーの左舷側結合部には、一時退避させていたPMA-3が再び結合されました。その後もISSの構成変更に伴い、トランクウィリティーの結合部には様々なモジュールが接続されました。2015年5月には、無人補給船の係留場所を確保するため、隣接するユニティ地球側にあった恒久型多目的モジュール（PMM）がトランクウィリティーの前方側に移設されました。2016年4月には、後方側結合部に実験的な膨張式モジュール「BEAM」が取り付けられました。結果として、天井側のデクスター設置部を除いた5箇所の結合部すべてに、何らかのモジュールが常時または一時的に結合されることとなりました。
2001年には、トランクウィリティー（当時はノード3）の設計について、居住モジュールを延期またはキャンセルし、そのスペースを利用して区画を拡張することで、実験ラックをより多く設置（8台から16台へ）可能にするという検討が行われましたが、この案は採用されませんでした。2005年の計画変更で居住モジュール自体が計画から削除されましたが、トランクウィリティーの拡張を行わずとも、ISSの常駐搭乗員数を3人から6人に増やすことが可能になったため、大がかりな設計変更は不要となりました。
「トランクウィリティー」という名称は、月面のアポロ11号着陸地点として有名な「静かの海（Sea of Tranquility）」にちなんで名付けられました。名称決定に先立ち、NASAは「ノード3」の名称を一般から公募しました。この際、アメリカの人気コメディアンであるスティーヴン・コルベア氏が自身のテレビ番組内で、彼の名前「コルベア」への投票を呼びかけた結果、インターネット投票では「コルベア」が圧倒的多数で1位となりました。しかし、NASAは「存命中の人物名をモジュール名に用いない」という方針に基づき、この結果を却下しました。代わりに、人類初の月面着陸という歴史的な出来事の舞台となった「静かの海」に由来する名前が選ばれることになりました。この名称は、スティーヴン・コルベア氏の番組にゲストとして招かれたNASA宇宙飛行士によって正式に発表されました。なお、「コルベア」という名前は、ISS内に設置された2台目のトレッドミル（運動器具）に「Combined Operational Load Bearing External Resistance Treadmill」の略称として与えられることになり、ユーモアを交えた結末となりました。
全長：約6.70メートル
直径：約4.48メートル
質量：
打ち上げ時：約15,500 kg
* 軌道上：約19,000 kg
開発と機能
このモジュールは、欧州宇宙機関（ESA）が開発・製造を担当しました。先に結合されていた「ハーモニー」（ノード2）もESA製であり、トランクウィリティーはハーモニーとほぼ同じ構造を持っていますが、ユニティ（ノード1、米国製）と比較すると全長が長くなっています。トランクウィリティーの最大の特長は、当時宇宙で使用されていた中で最も先進的な生命維持システムを搭載している点です。使用済みの排水をリサイクルして飲料水などに再利用するシステムや、乗員が必要とする酸素を生成する装置が備えられています。さらに、ISS内部の空気を浄化し、成分を監視・制御する空気再生システムも設置されています。乗員が日常的に使用する排水衛生区画、すなわちトイレもこのモジュールに設置されています。これらの生命維持システムの一部は、トランクウィリティーがISSに到着する前から、他のモジュール（デスティニーなど）で仮運用されており、トランクウィリティーの設置後に移設されました。
構造と結合箇所
トランクウィリティーは、他のモジュールとの結合を可能にする共通結合機構を6箇所に有しています。これらの結合部は、電力やデータの伝送、コマンドの送受信、熱や環境の制御、そして乗員の往来といった多様な機能を提供します。ただし、天井側の1箇所は、カナダアーム2の先端に取り付けられるロボット「デクスター」を設置するための改造が施されたため、モジュールを直接結合する機能は備えていません。
ISSへの設置過程
トランクウィリティーのISSへの設置は、複雑な手順を経て行われました。当初はユニティの地球側結合部に取り付けられる計画でしたが、変更によりユニティの左舷側に設置されることになりました。設置に先立ち、まずユニティの地球側に結合していた与圧結合アダプタ3（PMA-3）をユニティ左舷側に一時移動させ、船内から配線・配管の改造を行いました。その後、トランクウィリティーをユニティ左舷側に結合しました。大型観測窓モジュールである「キューポラ」は、トランクウィリティーと結合された状態で一緒に打ち上げられました。軌道上で、キューポラはトランクウィリティーの底側（地球側）にある結合部に移設されました。キューポラ移設によって空いたトランクウィリティーの左舷側結合部には、一時退避させていたPMA-3が再び結合されました。その後もISSの構成変更に伴い、トランクウィリティーの結合部には様々なモジュールが接続されました。2015年5月には、無人補給船の係留場所を確保するため、隣接するユニティ地球側にあった恒久型多目的モジュール（PMM）がトランクウィリティーの前方側に移設されました。2016年4月には、後方側結合部に実験的な膨張式モジュール「BEAM」が取り付けられました。結果として、天井側のデクスター設置部を除いた5箇所の結合部すべてに、何らかのモジュールが常時または一時的に結合されることとなりました。
設計変更案
2001年には、トランクウィリティー（当時はノード3）の設計について、居住モジュールを延期またはキャンセルし、そのスペースを利用して区画を拡張することで、実験ラックをより多く設置（8台から16台へ）可能にするという検討が行われましたが、この案は採用されませんでした。2005年の計画変更で居住モジュール自体が計画から削除されましたが、トランクウィリティーの拡張を行わずとも、ISSの常駐搭乗員数を3人から6人に増やすことが可能になったため、大がかりな設計変更は不要となりました。
名称の由来
「トランクウィリティー」という名称は、月面のアポロ11号着陸地点として有名な「静かの海（Sea of Tranquility）」にちなんで名付けられました。名称決定に先立ち、NASAは「ノード3」の名称を一般から公募しました。この際、アメリカの人気コメディアンであるスティーヴン・コルベア氏が自身のテレビ番組内で、彼の名前「コルベア」への投票を呼びかけた結果、インターネット投票では「コルベア」が圧倒的多数で1位となりました。しかし、NASAは「存命中の人物名をモジュール名に用いない」という方針に基づき、この結果を却下しました。代わりに、人類初の月面着陸という歴史的な出来事の舞台となった「静かの海」に由来する名前が選ばれることになりました。この名称は、スティーヴン・コルベア氏の番組にゲストとして招かれたNASA宇宙飛行士によって正式に発表されました。なお、「コルベア」という名前は、ISS内に設置された2台目のトレッドミル（運動器具）に「Combined Operational Load Bearing External Resistance Treadmill」の略称として与えられることになり、ユーモアを交えた結末となりました。
仕様
全長：約6.70メートル
直径：約4.48メートル
質量：
打ち上げ時：約15,500 kg
* 軌道上：約19,000 kg
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