トランスカナダハイウェイ

トランスカナダハイウェイ：カナダを繋ぐ道

トランスカナダハイウェイは、カナダの太平洋岸から大西洋岸まで、文字通り国土を横断する幹線道路網です。英語では"Trans-Canada Highway"、フランス語では"Route transcanadienne"と表記され、日本語では「カナダ大陸横断高速道路」と訳されることもあります。しかし、その実態はアメリカの州間高速道路網とは異なり、日本の国道のように一般道路に割り当てられている区間も多く存在します。

成立と特徴

1948年のトランスカナダハイウェイ法によって制定され、1962年に供用が開始、1970年に完成しました。道路標識は、緑地に白のメイプルリーフがあしらわれたデザインで、カナダの象徴となっています。略称はTCH。

しかし、アメリカの州間高速道路網のような完全な高速道路網ではなく、交差点が点在する区間や片側一車線の対面通行の区間も少なくありません。これは、カナダの道路行政が連邦政府ではなく、各州に権限が委譲されていることが大きく影響しています。

各州の権限と路線の複雑さ

カナダには、連邦政府主導で全国規模の高速道路網を建設するという構想がありませんでした。そのため、トランスカナダハイウェイの建設・維持管理は各州に委ねられています。2000年と2001年には、当時のジャン・クレティエン政権下の連邦政府が、トランスカナダハイウェイを4車線のフリーウェイにする計画を立てましたが、各州からの反対が多く、最終的に中止となりました。反対派の多くは、交通量の少ないトランスカナダハイウェイに投資するよりも、交通量の多い州内交通やアメリカへ繋がる道路に投資する方が効率的だと考えたのです。

ハイウェイの番号付けも各州に委ねられており、統一されていません。マニトバ州以西の州では、主要ルートを「ハイウェイNo.1」、北部ルートを「ハイウェイNo.16」と統一していますが、マニトバ州からオンタリオ州に入ると州ごとに番号が変わります。東部の州では、既存の高速道路にトランスカナダハイウェイの指定を重ねている箇所も多く、ケベック州では独自の番号制度があるため、統一は困難です。

「起点」という概念の曖昧さ

トランスカナダハイウェイを全国規模の道路網として捉えると、「起点」という概念自体が曖昧になります。しかし、ニューファンドランド・ラブラドール州のセントジョンズでは、「起点」を示す「マイル・ワン」という表現を使用し、スタジアム兼展示会会場に「マイルワン・センター」と名付けています。

一方、ブリティッシュコロンビア州のビクトリアには、正式なトランスカナダハイウェイ西端として「マイル・ゼロ」という記念碑がビーコン・ヒルに建てられています。

また、トフィーノには、「トランスカナダ（カナダ横断）ハイウェイ太平洋側終点」という標識が建っています。これは、1953年以前に建てられたと考えられており、トフィーノが1920年代から観光地として栄え、舗装道路の終点であったことに由来します。しかし、1950年代に公式にトランスカナダハイウェイ網が整備された際、ナナイモをビクトリアに接続するルートが優先され、トフィーノは接続されませんでした。

アニマル・オーバー・パス：動物との共存

トランスカナダハイウェイには、野生動物の生態系を守るための特別な構造物があります。それがアニマル・オーバー・パスです。これは、動物が安全に道路を横断できるように設けられた橋で、当初はアンダー・パス（地下道）が設置されましたが、クマやオオカミが利用しないことが判明したため、橋が建設されました。

トランスカナダハイウェイは、単なる道路網ではなく、カナダの歴史、文化、そして自然環境に対する配慮が込められた、象徴的な存在と言えるでしょう。

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