トリポリ伯国

トリポリ伯国

トリポリ伯国は、12世紀初頭にレバント地方に成立した十字軍国家の一つです。他の十字軍国家と同様に、この国もまた、宗教的な動機と政治的な野心によって、中東に誕生しました。

起源

1102年、第一次十字軍の指導者であったトゥールーズ伯レーモン・ド・サン・ジルは、豊かな港湾都市トリポリを支配していたバヌー・アンマールとの戦いを開始しました。ジェノヴァ艦隊の支援を受け、レーモンはトリポリ北部の都市を次々と占領し、1103年にはトリポリを包囲しました。東ローマ帝国は、十字軍国家アンティオキア公国を牽制するためにレーモンを支援しました。レーモンの死後、息子のアルフォンス・ジュルダンが相続人となり、従兄のギヨーム・ジュルダンが摂政を務めました。

発展

ギヨーム・ジュルダンは、トリポリの包囲を継続し、周辺地域を占領しました。レーモンの庶子ベルトランが東方に到着し、ギヨームとレバノンの継承権を争いましたが、1109年、エルサレム王などの援軍を得てトリポリは陥落し、ベルトランが初代領主となりました。トリポリ伯国は、海洋国家として発展し、レバノン沿岸を支配しました。センダル織などの特産品をジェノヴァやヴェネツィアと交易し、経済的な繁栄を享受しました。また、アルメニア人との関係も深く、レーモン3世の時代には、アンティオキア公の次男が養子となり、その後はアンティオキア公国と同じ君主によって統治されました。

滅亡

アンティオキア公国が滅亡した後も、トリポリは存続しましたが、ボエモン7世の死後、後継者争いが起こりました。妹ルシアは、ジェノヴァの保護下にある市民との間で継承権を争いましたが、この争いはヴェネツィア人や野心家のジェノヴァ市長を怒らせました。彼らはマムルーク朝のスルタン・カラーウーンと結び、トリポリを攻撃しました。カラーウーンも、トリポリがモンゴル帝国軍のアラブ侵略でモンゴルに加担したことを懲罰しようとしていました。1289年、トリポリはマムルーク朝軍によって包囲され、1ヶ月後に陥落し、破壊・略奪されました。現在、この地域にはフランス系のキリスト教文化が残っています。

領主

トゥールーズ伯レーモン（1102年 - 1105年）
アルフォンス・ジュルダン（1105年 - 1109年）、摂政ギヨーム・ジュルダン
トゥールーズ伯ベルトラン（1109年 - 1112年）
ポンス（1112年 - 1137年）
レーモン2世（1137年 - 1152年）
レーモン3世（1152年 - 1187年）
ボエモン4世（1187年 - 1233年）兼アンティオキア公（1201年 - 1216年、1219年 - 1233年）
ボエモン5世（1233年 - 1251年）兼アンティオキア公
ボエモン6世（1251年 - 1275年）兼アンティオキア公（1251年 - 1268年）
ボエモン7世（1275年 - 1287年）
ルシア（1287年 - 1289年）

関連項目

レバノン
トゥールーズ家
トリポリ伯の一覧
* アンティオキア公国

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