トレイン・イン・ヴェイン

トレイン・イン・ヴェイン (Train in Vain (Stand by Me))

ザ・クラッシュの代表作の一つである「トレイン・イン・ヴェイン」は、アルバム『ロンドン・コーリング』に収録されています。当初はトラックリストに記載されておらず、隠しトラックとして収録されていました。これは、ジャケット制作後に収録が決定したためという背景があります。

この曲は、クラッシュにとって初の全米トップ30入りを果たした楽曲であり、2004年にはローリング・ストーン誌の「史上最も偉大な500曲」で292位に選ばれるなど、高い評価を受けています。

アメリカでは、コーラス部分の「stand by me」が追加され、「Train in Vain (Stand By Me)」というタイトルでリリースされました。これは、ベン・E・キングの代表曲「スタンド・バイ・ミー」との混同を避けるための措置でした。

制作の経緯

「トレイン・イン・ヴェイン」は、『ロンドン・コーリング』のレコーディング終盤に制作され、翌日には録音されました。当初は、イギリスの音楽雑誌NMEのソノシートに収録される予定でしたが、その計画が頓挫したため、アルバムに追加されることになりました。

ミック・ジョーンズは、「トレイン・イン・ヴェイン」について、「NMEに提供する予定だったが、うまくいかず、余ってしまったのでアルバムに入れた。しかし、時間が足りずジャケットには載せられなかった」と語っています。その結果、この曲は歌詞カードにもトラックリストにも記載されない唯一の楽曲となりました。

楽曲の内容

『ロンドン・コーリング』のリリース当時、多くのファンは、コーラスの歌詞からこの曲のタイトルを「スタンド・バイ・ミー」だと認識していました。歌詞には列車に関する描写が全くないため、本当のタイトルの意味は不明確です。ミック・ジョーンズは、「列車のリズムに似ていると思ったが、改めて聴くとそうは感じない」と述べています。

「トレイン・イン・ヴェイン」は、タミー・ウィネットの1968年のヒット曲「スタンド・バイ・ユア・マン」の歌詞を引用したラブソングであり、ギターリフはJ.J.ジャクソンの1966年のヒット曲「バット・イッツ・オーライ」に似ています。また、ロバート・ジョンソンのファンにとっては、この曲のタイトルは「むなしい恋 (Love in Vain)」を連想させるものとなっています。

この曲は、ザ・スリッツの「ティピカル・ガールズ」に対する返歌であるという解釈も存在します。ミック・ジョーンズがこの曲を書く直前に、スリッツのギタリストであるヴィヴ・アルバータインと破局したことが背景にあります。

カバー・バージョン

「トレイン・イン・ヴェイン」は、数多くのアーティストによってカバーされています。EMF、イラ!、ブラック・クロウズ、マニック・ストリート・プリーチャーズ、シャウト・アウト・ラウズなどがその例です。アニー・レノックスは、1995年のアルバム『メドゥーサ』でソウルフルなダンス・ビートでカバーし、ドワイト・ヨアカムは1997年のアルバム『アンダー・ザ・カヴァーズ』でカントリー・バージョンを発表しました。また、サード・アイ・ブラインドは1999年のトリビュート・アルバムでこの曲をカバーしています。

ガービッジは、1996年の楽曲「スチューピッド・ガール」で、「トレイン・イン・ヴェイン」のドラムトラックをサンプリングしています。この使用に関して、ジョー・ストラマーとミック・ジョーンズは共同作者としてクレジットされ、印税を受け取りました。2007年のリマスター盤では、ポール・シムノンとトッパー・ヒードンもクレジットされています。

シングルとしてのリリース

「トレイン・イン・ヴェイン」は、ヨーロッパでは1980年6月に「バンクロバー」、「ロッカーズ・ガロア...UKツアー」との両A面シングルとしてリリースされました。イギリスでは当初シングル化されず、「バンクロバー」と「ロッカーズ・ガロア」のみの7インチシングルが発売されました。最初にシングルとして発売されたのはアメリカで、1979年にプロモーション用限定盤の12インチシングルがリリースされました。その後、B面に「ロンドン・コーリング」を配した7インチシングルが1980年2月12日にアメリカで再発売され、イギリスでは1991年に再発売されました。

アルバム収録

「トレイン・イン・ヴェイン」は、数多くのコンピレーション・アルバムに収録されています。『ザ・ストーリー・オヴ・ザ・クラッシュ』、『クラッシュ・オン・ブロードウェイ』、『ザ・シングルズ』、『ライヴ・クラッシュ』、『エッセンシャル・クラッシュ』、『the CLASH SINGLES '77-'85』、『ザ・シングルズ2007』、そしてオリジナルアルバム『ロンドン・コーリング』にも収録されています。

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