テタヌラ類

テタヌラ類：鳥類を含む恐竜グループの進化と多様性

テタヌラ類 (Tetanurae) は、中生代に繁栄した獣脚類恐竜の一群です。学名はラテン語で「堅く曲がりにくい尾」を意味し、その名の通り、尾椎が癒合して硬い尾を持つことが大きな特徴です。このグループには、アロサウルス、ティラノサウルス、ヴェロキラプトルといった有名な恐竜だけでなく、驚くべきことに鳥類も含まれています。

テタヌラ類の定義と起源

テタヌラ類は、1986年に古生物学者ジャック・ゴーティエによって、系統分類学的な手法を用いて定義されました。獣脚類の中でも、より原始的な種を除いた新獣脚類から、さらにコエロフィシス類とケラトサウルス類を除いたグループとして位置付けられています。中生代三畳紀後期、もしくはジュラ紀前期には、コエロフィシス類、ケラトサウルス類、そしてテタヌラ類が分岐したと考えられています。従来の分類であるカルノサウルス類やコエルロサウルス類は、現在ではテタヌラ類の下位分類群として認識されています。

テタヌラ類の解剖学的特徴

テタヌラ類は、いくつかの共通した解剖学的特徴を共有しています。

頭部: 前上顎骨は小さく三角形で、通常は4本の歯を持ちますが、種類によって変異があります(例: トルヴォサウルスは3本、アロサウルスやネオヴェナトルは5本)。スピノサウルス科では前上顎骨が例外的に長く、7本の歯を持つ。上顎骨は眼窩の後方まで伸びず、上顎の歯も眼窩の後方には存在しません。上顎骨には前眼窩窓よりも前に開口部（第二前眼窩窓）がありますが、トルヴォサウルスやスピノサウルス科などでは欠けている場合も多いです。涙骨は外側に広がり、側頭窓も外側に移動し、縦長に細長くなります。カルカロドントサウルス類では、この側頭窓の復元が特に議論されています。
脊椎: 原始的なテタヌラ類では、頚椎10個、胴椎13個、仙椎5個、尾椎40～50個以上という脊椎骨の数を基本形とします。尾椎は、神経棘から前後に突き出した関節突起によって強固に連結されています。
肩: 肩甲骨は薄く細長く、肩峰突起が顕著に発達しています。
前肢: 第IV指が消失し、第II中手骨は第I中手骨の2倍の長さになります。
後肢: 坐骨の閉鎖孔突起が発達しますが、鳥類では二次的に消失します。大腿骨転子稜は縮小し、脛骨近位の腓骨顆は大きく脛骨稜からずれています。第I中足骨は幅広の三角形で、第II中足骨の遠位に位置します。

テタヌラ類の系統分類

テタヌラ類は、アヴェテロポーダ類へと進化し、さらにその下にカルノサウルス類とコエルロサウルス類という主要な系統が分かれます。

カルノサウルス類: アロサウルス、スピノサウルスなどが含まれ、大型の捕食動物が多かった系統です。
コエルロサウルス類: ティラノサウルス、ヴェロキラプトル、そして鳥類を含む系統です。小型から巨大なものまで多様な体格の恐竜が存在し、高度な知能や羽毛を持つ種類も含まれています。

テタヌラ類は、その多様性と進化において、恐竜の進化史を理解する上で非常に重要なグループです。今後の研究により、さらに詳細な分類と進化の過程が明らかになることが期待されています。 鳥類の起源を解明する上でも、テタヌラ類の研究は不可欠です。

参考文献

Weishampel DB, Dodson P, Osmólska H, (2004) 『The Dinosauria second edition』University of California Press
* Fastovsky DE, Weishampel DB:著, 真鍋真：訳, (2006) 『恐竜学 進化と絶滅の謎』丸善

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