トロント市電

トロント市電は、カナダのオンタリオ州トロントを走る路面電車で、トロント交通局（TTC）が運営しています。その歴史は1861年に馬車鉄道として始まったことに遡り、北米最大規模の路面電車網へと発展しました。

概要

トロント市電の総延長は約82km、線路総延長は304.6kmに達します。年間利用客数は約9576万人と、北米の路面電車・ライトレールの中でも最大規模を誇ります。路線の大部分は道路との併用軌道ですが、近年は専用軌道の整備も進んでいます。また、一部区間は地下鉄となっており、地下駅も存在します。

トロント市電は、第二次世界大戦後に北米の多くの都市で路面電車が廃止される中、存続した稀有な例です。1960年代には廃止計画もありましたが、市民の反対によって撤回されました。1990年には路線延伸が行われ、一部が地下の専用軌道となる604ハーバーフロント線が開業しました。さらに1997年には510スパダイナ線が専用軌道路線として再開しました。

21世紀に入り、施設の老朽化が進んだため、一部路線の撤廃と再敷設、集電装置のパンタグラフ化が進められ、2020年までに全路線で完了しました。2010年には512セントクレア線が専用軌道化されました。また、2014年には初の超低床電車「フレキシティー」が導入されました。一部路線は地下区間や専用軌道を持つLRT（ライトレール）に近い形態ですが、トロント市電は一般的にLRTとは区別されています。

軌間は1495mmで、トロントゲージと呼ばれています。

路線

現在、以下の10路線が運行されています。

501 クィーン（Queen）：総延長24.43km、1875年開業。24時間運行。
502 ダウンタウナー（Downtowner）：総延長9.38km。
503 キングスロード（Kingston Rd）：総延長8.97km。
504 キング（King）：系統504Aが総延長10.39km、系統504Bが総延長9.61km。最も利用客数の多い路線で、2系統に分かれています。キングストリート沿いはトランジットモール化される予定です。
505 ダンダス（Dundas）：総延長10.74km。
506 カールトン（Carlton）：総延長14.82km、1886年開業。24時間運行。
509 ハーバーフロント（Harbourfront）：総延長4.65km、1990年開業。当初はLRT路線として開通しましたが、2012年に一部区間が510スパダイナ線と統合されました。2017年に最初にパンタグラフ化が完了しました。
510 スパダイナ（Spadina）：総延長6.17km、1878年開業。地下鉄1号線、2号線のスパダイナ駅とユニオン駅を結びます。1997年に専用軌道化され、地下駅も存在します。パンタグラフ化も完了。
511 バサースト（Bathurst）：総延長6.47km、1885年開通。地下鉄2号線バサースト駅に接続。
512 セントクレア（St. Clair）：総延長7.01km、1913年開通。2010年に専用軌道化。地下鉄ヤング・ユニヴァーシティ線と交差するセントクレア・ウェスト駅は地下駅です。パンタグラフ化も完了。

車両

1977年に導入されたCLRV、1987年に導入されたALRVに加え、2014年には超低床電車のフレキシティーが導入され、2020年までに全車両が置き換えられました。老朽化したCLRVとALRVの廃車、新型車両の納入が間に合わないため、一部路線ではバスによる代行運行が行われていました。

計画

一部路線では、延伸やLRT化の計画があります。

Waterfront West LRT
East Bayfront LRT

まとめ

トロント市電は、その長い歴史と広大な路線網でトロントの都市交通を支えています。路線の近代化や新型車両の導入を通じて、今後もトロント市民の足として重要な役割を果たすでしょう。

もう一度検索