トンガ大首長国

トンガ大首長国（Tu'i Tonga Empire）

トンガ大首長国は、かつてオセアニアに強大な勢力を誇った大首長国であり、領域交易圏帝国としても知られています。その中心はトンガタプ島にあり、首都はムアに置かれていました。海洋国家としての側面も強く、最盛期にはニウエからティコピアにまで及ぶ広大な領域に影響を及ぼしました。

交易帝国の始まり

トンガの交易帝国は、サモアのマヌア大首長やフィジーのプロトゥ大首長の勢力衰退後、紀元950年頃に形成され始めました。同時期には、ヤップ島を拠点とするミクロネシア交易帝国圏も存在していました。当初、トンガはプロトゥ大首長や、トンガの大部分を支配していたマヌア大首長の強い影響下にありましたが、幾多の戦いを経て、他国の支配から脱し自立を果たします。そして、初代トンガ大首長アホエイトゥのもとで王朝が築かれました。アホエイトゥはサモアの高貴な一族の出身者を母に持ち、父親は神格を備えたサモアの大祭司でした。このため、トンガ王朝は世俗的、宗教的両方の権威を持つとされました。

初代トンガ大首長アホエイトゥは首都をトロアに定めましたが、第9代大首長の時代にヘケタへと遷都されました。

帝国の拡大（紀元1200年～1500年）

第10代トンガ大首長のモモ王と、その息子である第11代トゥイタトゥイの時代に、交易帝国は大きく拡大しました。フィジー全域とサモアの一部を支配下におさめ、西ポリネシア、中央ポリネシア全域、メラネシアの一部、そしてミクロネシアにまで勢力を広げました。最盛期には300万平方キロメートルを超える海洋領域に影響を及ぼし、直接支配下になかった地域からも貢税を徴収していました。トゥイタトゥイの息子の代には、首都はムアへと移され、帝国の歴史において最も繁栄した時代を迎えました。

帝国の海軍

トンガ交易帝国の成功は、強力な海軍力に支えられていました。軍船には逆三角帆を備えた航海カヌーが用いられ、最大の船は100人まで乗船可能でした。有名な船には、トンガフエシア、アキヘウホ、ロミペアウ、タカイポマナなどがあります。交易によって得た莫大な富と貢税が国庫に流入し、トンガの繁栄を支えました。

三分体制とトンガ大首長の衰退

トンガ大首長の衰退は、度重なる戦争や内部からの圧力によって始まりました。これに対処するため、政治顧問としてファレファーが設立されました。ファレファーは当初、王朝の運営を維持しましたが、圧力は依然として残り、幾人かの統治者が暗殺される事態が続きました。特に、ハヴェア1世、ハヴェア2世、タカラウは暴君として知られています。

1470年頃のタカラウの暗殺をきっかけに、交易帝国は再編を迫られました。トンガ大首長の権限は宗教的な役割に限定され、世俗的な権限は新たに成立したトゥイ・ハアタカラウ王朝が担うことになりました。この王朝の初代統治者はモウンガモトゥアで、彼はタカラウの長男であり、次代のトンガ大首長カウウルフォヌア1世の弟でした。

この体制は100年以上続きましたが、トゥイ・トンガ体制と同様に、新しい王朝も内外からの圧力に直面し、第三の王統であるトゥイ・カノクポルが成立しました。この期間、交易帝国は中央集権化が進みましたが、影響力の大部分を失うことになります。1600年には、マリエトア一族によってサモアから駆逐されました。

トゥイ・カノクポルの興隆

トゥイ・カノクポル王朝は、第6代トゥイ・ハアタカラウアの息子であるンガタの統治下、1610年頃に成立しました。この王朝は、先立つ二つの王朝と交代するのではなく、世俗支配において競合する形となりました。カノクポル大首長は、母親がサモアの大族長の娘であったため、サモアの政治状況から大きな影響を受けました。結果として、体制はより流動的で分散したものになり、民主化の始まりをもたらしました。

内戦と1875年の憲法

1799年、第14代トゥイ・カノクポルであるトゥクアホが暗殺され、トンガは50年にわたる内戦に突入しました。第19代トゥイ・カノクポルのジョージ・ツポウ1世は、この内戦を機に勢力を拡大しました。キリスト教の洗礼を受けた彼は、「成文法典」を導入し、一般民衆の支持を得ることに成功しました。最初の法典は1839年の「ヴァヴァウ法典」でした。宣教師たちも彼を支援しました。

ジョージ・ツポウ1世は、法典の制定を通して、トゥイ・トンガの宗教的権力を弱め、カノクポル族長の権威を低下させました。彼は王国を統一し、1875年には自身の統治を確実にする憲法を制定しました。

文化

帝国の首都であったムアは、紀元前500年以前に創建されたと考えられていますが、正確な年代は不明です。トンガの文化については多くが知られていませんが、トンガの人々が洗練された道路と運河のシステムを持っていたこと、そして巨大なピラミッドや石造建造物を建設していたことは明らかです。洪水と海面水位の上昇のため、首都はその後ヌクアロファへと移転しました。

トンガの有名な境界標の一つとして、13世紀にトゥイタトゥイの治世下で造られたアモンガ・ア・マウイがあります。トンガの王や女王たちは、巨大な石のマウンドであるランギに埋葬されました。

脚注

詳細は参考文献を参照してください。

参考文献

『海洋島嶼国家の原像と変貌』(編集：塩田光喜、アジア経済研究所、ISBN 4-258-04473-3、執筆：大谷裕文、「第4章 異人と国家 -トンガの場合-」、pp.147-189)
Brij V. Lal, Kate Fortune (2000) (英語). The Pacific Islands: An Encyclopedia, 第 1 巻. University of Hawaii Press. ISBN 9780824822651.

関連項目

トンガの歴史

外部リンク

トンガの歴史　（英語）
* トンガの諸王家の王統と簡単な歴史　（英語）

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