トーチ (カーリー・サイモンのアルバム)

トーチ (Torch)

『トーチ』は、1981年にアメリカ合衆国のシンガーソングライター、カーリー・サイモンによって発表された通算10作目のスタジオ・アルバムです。本作は彼女のキャリアにおいて、初めて全編にわたって往年のスタンダード・ナンバーを取り上げた作品として特筆されます。

制作背景

アルバムのプロデュースは、前作『パーティへようこそ』（1980年）に続いてヴィブラフォン奏者のマイク・マイニエリが担当しました。マイニエリはプロデューサーとしてだけでなく、ヴィブラフォンやピアノ、マリンバの演奏でも本作に貢献しています。カーリー・サイモン自身は、本作のために書き下ろした唯一のオリジナル楽曲「From the Heart」（心から）で作詞・作曲を手がけたほか、「Blue of Blue」（蒼い肖像）や「What Shall We Do with the Child」（ホワット・シャル・ウィ・ドゥ）では既存の歌詞に新たな言葉を加える補作詞を行っています。収録曲の中には、スティーヴン・ソンドハイム作詞・作曲の「Not a Day Goes By」があり、この曲は本作のリリース後に初演されたミュージカル『Merrily We Roll Along』で披露されています。本作でのスタンダード楽曲への取り組みは手応えがあったようで、カーリー・サイモンは後に再びスタンダード集アルバム『マイ・ロマンス』（1990年）を制作しています。

反響

商業的な面では、アメリカの主要アルバムチャートであるBillboard 200において最高位50位を記録し、合計24週にわたりチャートインしました。国際的にも評価され、ニュージーランドや日本では、1975年のアルバム『人生はいたずら』以来となるナショナル・チャート入りを果たし、当時の彼女の国際的な人気を示す結果となりました。

収録曲

本作には、全11曲が収録されています。ジャズ、ブルース、ポップスのクラシックや、唯一のオリジナル楽曲で構成されています。

サイド 1

1. 蒼い肖像 (Blue of Blue) - (Nicholas Holmes / additional lyrics by Carly Simon) - 3:41
2. アイル・ビー・アラウンド (I'll Be Around) - (Alec Wilder) - 2:33
3. ガット・イット・バッド (I Got It Bad and That Ain't Good) - (Duke Ellington, Paul Francis Webster) - 3:48
4. アイ・ゲット・アロング・ウィズアウト・ユー (I Get Along Without You Very Well) - (Hoagy Carmichael) - 3:28
5. 身も心も (Body and Soul) - (Edward Heyman, Robert Sour, Frank Eyton, Johnny Green) - 4:14

サイド 2

1. ハート (Hurt) - (Jimmie Crane, Al Jacobs) - 3:27
2. 心から (From the Heart) - (C. Simon) - 2:50
3. 春はここに (Spring Is Here) - (Richard Rodgers, Lorenz Hart) - 3:06
4. プリティ・ストレンジ (Pretty Strange) - (Jon Hendricks, Randy Weston) - 3:03
5. ホワット・シャル・ウィ・ドゥ (What Shall We Do with the Child) - (Holmes, Kate Horsey / additional lyrics by C. Simon) - 2:49
6. ノット・ア・デイ・ゴーズ・バイ (Not a Day Goes By) - (Stephen Sondheim) - 2:43

参加ミュージシャン

本作のレコーディングには、カーリー・サイモンのボーカルを中心に、多くの著名なミュージシャンが参加し、スタンダード楽曲に深みを与えています。

カーリー・サイモン - ボーカル
マイク・マイニエリ - ピアノ (#4, #10), ヴィブラフォン (#5), マリンバ (#10)
ウォーレン・バーンハート - ピアノ (#1, #3, #5, #6, #7, #8, #9, #11), シンセサイザー (#4)
ヒュー・マクラッケン - ギター (#1, #2, #6), アコースティック・ギター (#7)
リー・リトナー - ギター (#2, #3, #9)
ジェイ・バーリナー - クラシック・ギター (#10), フォーク・ギター (#10)
アンソニー・ジャクソン - ベース (#1, #3, #6, #9)
エディ・ゴメス - アコースティック・ベース (#5)
リック・マロッタ - ドラムス (#1, #3, #9)
グラディ・テイト - ドラムス (#5)
ジェリー・マロッタ - ドラムス (#6)
デイヴィッド・サンボーン - アルト・サクソフォーン・ソロ (#1, #3)
フィル・ウッズ - アルト・サクソフォーン・ソロ (#5)
デヴィッド・ナディアン - ヴァイオリン・ソロ (#8)
ランディ・ブレッカー - トランペット・ソロ (#9)
ドン・セベスキー - オーケストレーション (#1, #9, #11)
ロバート・M・フリードマン - オーケストレーション (#2)
マーティ・ペイチ - オーケストレーション (#3, #4, #5, #8)
* ジミー・ワイズナー - オーケストレーション (#6)

『トーチ』は、シンガーソングライターとしてのカーリー・サイモンが、表現の幅を広げ、ジャズやブルースといったルーツミュージックへの敬意を示した、キャリアにおける重要な位置を占めるアルバムです。

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