トーマス・アデス

トマス・アデス（Thomas Adès）

トマス・ジョセフ・エドモンド・アデス（Thomas Joseph Edmund Adès, 1971年3月1日 - ）は、イギリスの作曲家、ピアニスト、そして指揮者として、現代音楽界で重要な存在です。ロンドンで生まれ、その才能は幼少の頃から開花しました。

経歴

アデスは、ポール・バーコウィッツにピアノを師事した後、ギルドホール音楽演劇学校でロバート・サクストンに作曲を学びました。ケンブリッジ大学に進学してからは、アレクサンダー・ゲールとロビン・ハロウェイに師事し、作曲の腕を磨きました。1990年には最初の作品「5つのエリオットの風景」が出版され、1992年に大学を最優秀の成績で卒業しました。

1993年、22歳でピアニストとしてロンドンデビューを果たしてからは、ソロや室内楽の演奏、録音にも積極的に取り組み、アルディッティ弦楽四重奏団など著名な団体と共演しました。自作の「ピアノ五重奏曲」などのCDをリリースする傍ら、コンロン・ナンカロウの「アーシュラのための3つのカノン」の第三曲を、ナンカロウ自身が遺した自動ピアノのロールから採譜し録音するという功績も残しています。また、イアン・ボストリッジやスティーヴン・イッサーリスといった名だたる演奏家たちの伴奏ピアニストとしても活躍しました。

1995年には、室内オペラ「パウダー・ハー・フェイス」が過激な性描写で物議を醸し、悪名を馳せました。この作品は、スキャンダラスなアーガイル公爵夫人、マーガレット・キャンベルをモデルにしており、1960年代の英国社会を騒然とさせた事件を題材としています。オペラはチャンネル4で映像化され、1999年のクリスマスに放映、2005年にはDVD化されました。アデス自身もDVDの特典映像に出演し、自作の映像化について語っています。

管弦楽曲「アシュラ」は、1997年10月にサイモン・ラトル指揮のバーミンガム市交響楽団によって初演され、1999年のBBCプロムスでは、アデス自身の指揮でロンドン初演を飾りました。2002年には、ラトルがベルリン・フィルの首席指揮者として「アシュラ」をベルリンで初演し、その模様はEMIからDVDとして発売されました。「アシュラ」は、ラトルとベルリン・フィルによって世界各地で演奏されています。

委嘱作品「アメリカ、予言」は、ニューヨーク・フィルハーモニックのミレニアムイベントのために1999年11月に作曲されました（イギリス初演は2000年6月）。2004年にはEMIクラシックスからCDが発売されています。

シェイクスピアの戯曲に基づくオペラ「テンペスト」は、2004年2月にコヴェント・ガーデン王立歌劇場で初演され、2005年にはコペンハーゲン歌劇場でデンマーク初演、2006年にはサンタフェ歌劇場でアメリカ初演を迎えました。ヴァイオリン協奏曲「Concentric Paths」は、2005年9月にヨーロッパ室内管弦楽団によって初演されました。2007年にはロンドン・バービカンセンターで回顧展が開催され、ラトル指揮ベルリン・フィルによって新作「Tevot」がイギリスで初演されたほか、王立歌劇場では「テンペスト」が再演されました。

近況

現在、アデスはオールドバラ音楽祭の芸術監督、バーミンガム現代音楽集団の音楽監督、そして王立音楽アカデミーの教授を兼任し、後進の育成にも力を注いでいます。

主要作品

オーケストラ作品

Asyla
America: A Prophecy
Concentric Paths
Tevot
In Seven Days
Polaris
Totentanz

オペラ作品

パウダー・ハー・フェイス
テンペスト
皆殺しの天使

室内楽作品

Five Eliot Landscapes
Arcadiana
Cardiac Arrest
Catch
Chamber Symphony
Concerto Conciso
Court Studies
Four Quarters
Les baricades mistérieuses
Lieux retrouvés
Life Story
Living Toys
The Origin of the Harp
Piano Quintet

合唱作品

* The Fayrfax Carol

アデスの作品は、その革新性と卓越した音楽性によって、世界中の聴衆を魅了し続けています。

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