トーマス・ブリスベーン

サー・トーマス・マクドゥーガル・ブリスベーン（Sir Thomas Makdougall Brisbane, 1st Baronet、1773年7月23日 - 1860年1月27日）は、多岐にわたる分野で功績を残した人物です。軍人、植民地施政官として活躍する傍ら、天文学者としても重要な業績を残しました。

スコットランドのエアシャイアで生まれたブリスベーンは、エディンバラ大学で天文学と数学を学びました。1789年または1793年に陸軍に入隊し、フランドル、西インド諸島、スペイン、北アメリカなど、各地で軍務に携わりました。初代ウェリントン公爵アーサー・ウェルズリーのもとで働いたことが、彼のキャリアにおいて重要な転機となります。ウェリントンの推薦により、1821年にオーストラリア・ニューサウスウェールズの総督に任命されました。

総督として、ブリスベーンは植民地の発展に尽力しました。農業の振興、通貨制度の改革などに功績があり、その名前はオーストラリアのブリスベン川、ブリスベン市に今も残っています。しかし、植民地の支配階層との対立が原因で、1825年に総督を解任され、スコットランドへ帰国することになりました。その後、1836年と1838年に軍への復帰を要請されましたが、これを断り、天文学の研究に専念することを選びました。

ブリスベーンの天文学者としての活動は、1808年に自宅に私設天文台を建設したことから始まりました。彼の観測は航海システムの進歩に貢献しました。オーストラリア総督として赴任する際には、観測機器と2人の助手（カール・ルートヴィヒ・クリスティアン・ルムカー、ジェイムズ・ダンロップ）を伴い、パラマッタにオーストラリア初の本格的な天文台を設立しました。この天文台での観測成果は、南半球の天文学研究に大きく貢献しました。1828年には王立天文学会ゴールドメダルを受賞し、1835年には南半球の7,385個の星を収録した「ブリスベーン・カタログ」を出版しました。これは、南半球の星図作成において画期的な業績として評価されています。

スコットランドに帰国後も、ブリスベーンは天文学への情熱を失うことなく、ケルソー近郊の妻の領地に天文台を設立し、観測を続けました。また、科学研究の支援にも力を入れ、1832年にはサー・ウォルター・スコットの後を継いでエディンバラ王立協会の会長に選ばれました。エディンバラ王立協会ゴールドメダルを創設し、科学研究を奨励しました。

ブリスベーンの功績は、その名が冠された様々な場所や物に今も残っています。オーストラリアのクイーンズランド州のブリスベン市、ブリスベン川、トーマス・ブリスベン卿天文台、そして月のブリスベン・クレーターは、彼の名誉を称えて名付けられました。カリフォルニア州の都市ブリスベンは彼にちなんでいません。

サー・トーマス・マクドゥーガル・ブリスベーンは、軍人、植民地施政官、天文学者として、多岐にわたる分野で貢献した人物であり、その功績は後世にまで語り継がれています。

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