ドイツポスト

ドイツポストDHL：中世から現代へ続く郵便と物流の巨人

ドイツポストDHLは、ドイツ・ボンに本社を置く、世界的な郵便および物流サービスを提供する多国籍企業です。その歴史は中世の帝国郵便まで遡り、約220か国で事業を展開する規模を誇ります。フランクフルト証券取引所に上場しており、ドイツ株価指数DAXにも採用されています。電子署名管理施設をダルムシュタットに保有するなど、デジタル技術への投資も積極的に行っています。日本では「ドイチェポスト」と呼ばれることも多く、ドイツ語の発音に近い表記です。

ドイツ再統一と民営化

ドイツポストの前身は、ドイツ再統一後にドイツ郵便を吸収合併したドイツ連邦郵便です。1995年、このドイツ連邦郵便は分割民営化され、ドイツポスト、ドイツテレコム、ポストバンクの3社が誕生しました。ドイツポストはその後、段階的な民営化を進め、2009年にはドイツポストDHLというグループブランド名を使用開始。同年には、ドイツ銀行に資本参加を発表するなど、積極的な企業戦略を展開しました。

マッキンゼー出身経営者と労働組合との連携

ドイツポストDHLの経営陣には、マッキンゼー・アンド・カンパニー出身の役員が多く名を連ねています。2009年に会長に就任したヴルフ・フォン・シンメルマン氏や、2017年にCEOに就任したフランク・アペル氏などがその代表例です。人事部門を率いるメラニー・クライス氏もマッキンゼー出身です。しかし、企業統治においては、株主代表の役員10名、従業員代表の役員10名、そして経営者5名という構成となっており、従業員代表のトップにはユニ・グローバル・ユニオンの有力者であるアンドレア・コクシス氏が就任するなど、労働組合との協力関係も重視している点が特徴です。2016年時点では、ドイツ復興金融公庫が20.5％、機関投資家が65.6％の株式を保有していました。

事業内容と成長戦略

ドイツポストDHLグループの売上高のうち、郵便事業は約4分の1を占めます。残りの約4分の3は、子会社であるDHLが担う国際的な物流事業によるものです。DHLは、世界各地で幅広い物流サービスを提供しており、グループ全体の収益を大きく支えています。

ドイツポストは、民営化後も積極的なM&A戦略を展開し、1997年には文房具店マックペイパーを買収、1999年にはポストバンクを買収するなど、事業領域を拡大してきました。2002年には国際宅配便会社のDHLを完全子会社化。アメリカ、オランダ、イタリアなど、海外の大手企業の買収も相次ぎ、グローバル企業としての地位を確固たるものとしています。2014年には、国際郵便部門がマーキュリー・インターナショナルと合併し、2016年にはUKメールを買収するなど、成長を続けました。ただし、2008年には完全民営化後初の赤字を記録するなど、経営環境の変化への対応が課題となる局面もありました。

歴史：帝国郵便からグローバル企業へ

ドイツポストの歴史は、第二次世界大戦後の連合制郵政当局にまで遡ります。1948年の東西ドイツ分裂により、東西でそれぞれ異なる郵便事業体が設立されました。東西ベルリン間の郵便物には制限や検閲が加えられ、戦後賠償問題も郵便制度に影響を与えました。ドイツ再統一後、西ドイツの郵便事業体が東ドイツの郵便事業体を吸収合併し、現在のドイツポストへと発展していきました。再統一時には、西ドイツの連邦郵便が既に公債を発行していたため、アメリカ資本の関与も指摘されています。

日本の郵政民営化との関連

ドイツポストの民営化は、日本の郵政民営化においても成功事例として頻繁に紹介されることがあります。両国は、郵便事業の民営化という点で共通項を持ち、ドイツポストの経験は日本の政策決定に影響を与えたとされます。

まとめ

ドイツポストDHLは、歴史と伝統を背景に、世界的な郵便・物流企業へと成長を遂げました。マッキンゼー出身の経営者、労働組合との協力関係、そして積極的なM&A戦略など、その組織運営や経営戦略は、現代企業経営の様々な側面から分析・研究されています。 今後、デジタル技術の進化やグローバルな競争環境の変化の中、さらなる発展を遂げるか注目されます。

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