ドイツ民主共和国憲法

ドイツ民主共和国憲法（1968年全面改正、1974年改正）

ドイツ民主共和国憲法は、第二次世界大戦後の1949年に制定された東ドイツの憲法です。当初はヴァイマル憲法の流れを汲むものでしたが、社会主義体制の強化とともに、その性格は大きく変容しました。

成立の背景と変遷

1945年のドイツ敗戦後、国土は連合国によって分割統治されました。ソ連占領地域では、ドイツ社会主義統一党 (SED) の主導のもとで憲法策定が進められ、1949年10月7日に憲法が成立、即日施行されました。

当初の憲法は、二院制議会、連邦制、大統領制など、ヴァイマル憲法の要素を残していましたが、1952年の州廃止と県への再編、1958年の参議院廃止、1960年の大統領制廃止と国家評議会の設置など、段階的な改正が行われました。

1968年4月6日には、憲法が全面改正され、第1条に「ドイツ民主共和国はドイツ民族の社会主義国家である」「労働者階級とマルクス・レーニン主義政党（社会主義統一党）の指導の下に置かれる」と明記され、社会主義国家としての性格が明確化されました。1974年にも改正が行われ、ソビエト連邦との「恒久的同盟関係」が強化されました。

憲法の構成と内容（1968年改正版）

憲法は前文と5編で構成されていました。

前文：ドイツ労働者階級の革命的伝統とファシズムからの解放を強調し、社会主義社会の形成を目指す決意が表明されました。
第1編 社会主義の社会秩序及び国家秩序の基礎：
第1条で、ドイツ民主共和国が労働者と農民による社会主義国家であり、社会主義統一党の指導下にあることが規定されました。
第6条では、ソビエト連邦との恒久的同盟関係が定められました。
第12条では、地下資源、鉱山、主要なインフラなどが人民所有とされ、私的所有は認められませんでした。
第2編 社会主義社会における市民及び共同体：
良心・信仰の自由、言論・出版・放送の自由、集会・結社の自由、通信の秘密などの基本的人権が規定されましたが、実際には「憲法の原則に従う」という制約があり、社会主義統一党やソ連を批判することは厳しく制限されました。
労働組合については、自由ドイツ労働総同盟 (FDGB) のみがその地位、権利、任務を認められていました。
第3編 国家指導の構造及び体系：
人民議会が最高の国家権力機関とされ、国民による選挙で選出されると規定されていましたが、実際の選挙は事前に議席配分が決まったリストへの賛否を問う形式的なものでした。
第4編 社会主義的合法性及び社会主義的司法：
社会主義社会、勤労者人民の政治的権力、国家・法秩序を維持することが根本的保証とされました。
* 第5編 終末規定：

民主化と東西ドイツ統一

1989年10月、東欧革命の波及により、エーリッヒ・ホーネッカー政権が崩壊し、東ドイツの民主化が始まりました。同年12月には、社会主義統一党の指導性を定めた第1条が削除されました。

1990年4月には円卓会議によって新憲法案が採択されましたが、初の自由選挙で東西ドイツの早期統一を訴えるドイツ連合が勝利したため、この改憲案は立ち消えとなりました。同年7月22日には州が復活し、8月23日には人民議会が10月3日をもって西ドイツの基本法の適用を受け入れることを決議し、8月31日に東西ドイツ統一条約が締結されました。

1990年10月、東西ドイツは統一され、旧東ドイツ地域にも西ドイツの基本法が適用されることとなりました。こうして、ドイツ民主共和国憲法は歴史的役割を終えました。

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