ドゥポンディウス

ドゥポンディウス：古代ローマの真鍮貨幣

ドゥポンディウスは、共和政ローマからローマ帝国時代にかけて流通した真鍮製の貨幣です。その価値は2アスに相当し、4アスでセステルティウス1枚、16アスでデナリウス1枚と交換できました。名前の由来はラテン語で「2ポンド」を意味する言葉にありますが、実際には常に2ポンドの重さを保っていたわけではありませんでした。

ドゥポンディウスの歴史

共和政ローマ期、ドゥポンディウスは大型の鋳造貨幣として登場しました。初期のドゥポンディウスは、表面にローマの胸像、裏面に6本スポークの車輪が描かれるのが一般的でした。しかし、共和政期における鋳造は短期間に終わりました。

その後、紀元前23年頃のアウグストゥスの貨幣改革によって、ドゥポンディウスとセステルティウスは金色に輝く銅合金で造られるようになりました。この合金は古代ローマの人々や研究者によってオリカルクムと呼ばれ、現代では黄銅として知られています。しかし、アウグストゥス帝の治世下でも銅製のドゥポンディウスが鋳造された記録があり、ネロ帝の時代にはアスがオリカルクムで造られたこともありました。ネロ帝時代のオリカルクム製のアスは、大きさや材質によって識別可能です。

アウグストゥス帝以降は、赤みがかった銅貨が主流となりました。ドゥポンディウスはアスとほぼ同じ大きさだったため、区別が困難な場合もありました。特にネロ帝の治世(66年)に発行されたドゥポンディウスは、皇帝の胸像に放射状の冠が追加され、識別を容易にする工夫がなされました。この放射状の冠による価値の表現方法は、アントニニアヌス貨（2デナリウス）や2セステルティウス貨など、他の貨幣でも見られます。しかし、ネロ帝以前や以後のドゥポンディウスには、この放射状の冠がないものが多く存在し、アスとの区別が困難な場合が多々ありました。加えて、時間の経過とともに緑青によって変色し、本来の色が不明瞭になっているものも多いです。

珍しい発見例

2007年には、ロンドンのDrapers' Gardensの発掘現場で、マルクス・アウレリウス帝の治世下（154年または155年）に鋳造された非常に状態の良いドゥポンディウスが発見されました。この発見は、古代ローマの貨幣研究において貴重な資料となりました。

貨幣の不足と代替手段

古代ローマでは、常に全ての種類の貨幣が十分に供給されていたわけではありませんでした。特定の貨幣が不足した場合、高額の貨幣を半分に分割して、半額の貨幣として使用することがありました。ドゥポンディウスも例外ではなく、半分に切断して1アスとして使用された例が確認されています。

まとめ

ドゥポンディウスは、古代ローマ経済を理解する上で重要な貨幣です。その材質、デザイン、価値、そして歴史的背景を理解することで、古代ローマ社会の一端を垣間見ることができます。 様々な変遷を経てきたドゥポンディウスは、その希少性や歴史的価値から、現在でも多くのコレクターや研究者から注目を集めています。

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