デナリウス

デナリウス：古代ローマの銀貨

デナリウスは、古代ローマ帝国で広く流通した銀貨です。紀元前211年ごろ、第二次ポエニ戦争中に初めて鋳造され、3世紀中頃までローマ経済の中心を担いました。その歴史、価値、そして現代への影響について詳しく見ていきましょう。

デナリウスの歴史

デナリウスは、当初4.5グラムの銀貨として鋳造されました。これは、当時のローマの重量単位で1/72ローマンポンドに相当します。しかし、時代が下るにつれて、銀の含有量が徐々に減少していきました。紀元前2世紀末には3.9グラム、ネロ帝の時代には3.4グラム、そして3世紀末には3グラム程度まで減少しました。

デナリウスという名称は、ラテン語で「十個一組」を意味します。これは、当初1デナリウスが10アス（青銅貨）に相当していたことに由来します。しかし、紀元前141年ごろにアスの重量が減らされたため、1デナリウスの価値は16アスに変更されました。

3世紀中頃には、アントニニアヌス銀貨に取って代わられましたが、会計の単位としてはその後も長く使用され続けました。最終的には青銅貨として鋳造されるようになり、アウレリアヌス帝やディオクレティアヌス帝の治世の初期に最後のデナリウスが鋳造されたと考えられています。

デナリウスの価値

デナリウスの価値は時代や経済状況によって変動しました。紀元1世紀のデナリウスは、現在の21米ドルに相当すると推定されています。共和政ローマ後期からローマ帝国初期において、単純労働者や兵士の日給は1デナリウスでした。

聖書（ヨハネの黙示録6章6節）にもデナリウスの記述があり、1デナリウスが労働者の日給として言及されています。また、当時の小麦価格や、ローマ軍団兵の年俸からもデナリウスの価値を推測することができます。ディオクレティアヌス帝の最高価格令が出された頃にはインフレが進み、日給や物価水準も大きく変化していました。

銀含有率と政治・経済

デナリウスの銀含有率は、政治的、経済的な状況を反映して変化しました。特にガッリエヌス帝の治世においては、アントニニアヌス貨は銅貨に銀を薄く塗っただけのものになっていました。このことは、ローマ帝国の後期の経済的混乱を示唆しています。

デナリウスの現代への影響

デナリウスは、ローマ帝国が滅びた後も、通貨名称としてその影響を世界中に与えました。アラブ世界では、デナリウスに由来する「ディナール」が通貨単位として使用されています。イギリスでは、1971年までペニーの略記として「d」が使われ、フランスでは「ドゥニエ」として硬貨名が生き残っています。また、ユーゴスラビアやセルビア、マケドニアでも「ディナール」が使用されているほか、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語など多くのロマンス語で、「お金」を意味する単語はデナリウスに由来しています。

デナリウスとアウレウス

アウレウス金貨は、デナリウスよりも高価で、主に貯蓄や特別な支払いに使用されていました。1アウレウスは25デナリウスに相当しました。

まとめ

デナリウスは、古代ローマ帝国の経済を支えた重要な通貨でした。その歴史、価値、そして現代への影響を理解することは、古代ローマ社会を理解する上で非常に重要です。本稿では、入手可能な情報を元にデナリウスについて解説しましたが、古代史の研究は常に進歩しているため、今後の研究で新たな知見が得られる可能性もあります。

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