ドニプロペトロウシク州

ドニプロペトロウシク州：ウクライナ中部の歴史と自然の織りなす地

ドニプロペトロウシク州は、ウクライナの中央部、ドニプロ川の中流域に広がる州です。州都はドニプロ（旧ドニプロペトロウシク）であり、日本においては旧称のドニエプロペトロフスク州という名称の方が広く知られています。2016年、ウクライナ危機を背景とした反ロ感情の高まりを受け、州都の名称はドニプロへと改称されましたが、州名自体は憲法改正が必要なため、2024年現在も変更されていません。2019年には「シチェスラウシカ」への改称案も議会で可決されたものの、憲法改正の条件を満たせず、実現には至っていません。

地理

ドニプロ川を境に、西側のドニプロ高地と東側のドニプロ低地とに二分される地形が特徴です。ドニプロ高地は南部で黒海低地へと移行し、ドニプロ低地の東南部にはアゾフ海低地が広がっています。州内にはドニプロ川をはじめ、オリーリ川、サマーラ川など多くの河川が流れ、100を超えるため池と1400もの自然池が存在する水豊かな地域でもあります。

気候は大陸性気候で、1月の平均気温は-5℃、7月の平均気温は22℃と、比較的大きな気温差が見られます。年間平均降水量は450mmです。また、石炭、石油、天然ガス、カオリナイトなどの資源も産出しています。

歴史

ドニプロペトロウシク州の土地は、古くから様々な遊牧民の居住地でした。紀元前7世紀から紀元後数世紀にかけてはスキタイ、サルマタイ、ゴート、フン、アラン、ペチェニーヒ、クマンなどがこの地を支配し、13世紀からはモンゴルの支配を受けました。15世紀以降は、リトアニア大公国とクリミア・ハン国の国境地帯となり、ウクライナ・コサックの重要な拠点が複数存在しました。トマキーウカ、バザヴルーク、ムィクィーティンのシーチ、チョルトムルィークのシーチ、そして新たなシーチなど、コサックの拠点が次々と興亡を繰り返しました。

1775年以降は帝政ロシアの支配下に入り、1802年にはドニプロペトロウシク州の前身となるエカテリノスラフ県が設置されました。1917年のロシア革命後は、ウクライナ内戦の激戦地となり、ウクライナ人民共和国、ウクライナ国、白軍など、複数の勢力が支配権を争いました。その後、ソ連の支配下に入り、1926年にドニエプロペトロフスク州として成立。ウクライナの革命家、グリゴリー・ペトロフスキーの名に由来する名称です。

1941年から1943年にかけてはナチス・ドイツの占領を受けましたが、1943年にソ連軍によって解放されました。1991年のウクライナ独立後、現在のドニプロペトロウシク州が成立したのです。

都市と人口

ドニプロペトロウシク州にはドニプロの他に、クリヴィーイ・リーフ、カミャンスケ、パウロフラードなど多くの都市があります。2001年の国勢調査によると、総人口は3,567,600人で、都市人口が83%を占めています。母語はウクライナ語が67%、ロシア語が32%ですが、ドニプロなど都市部ではロシア語話者が多く、日常会話ではロシア語が広く使われています。

観光

ドニプロペトロウシク州は、ロシア帝国時代とソ連時代に重工業地帯として発展したため、歴史的な建造物は少ないです。しかし、広大な草原や遊牧民の墓地、コサックの合戦跡など、歴史の息吹を感じられる場所もあります。聖変容大聖堂（1830-1835年）やドニプロペトロウシク歴史博物館、ジョーウチ・ヴォーディの博物館なども観光地として知られています。

出身者

ドニプロペトロウシク州出身の著名人には、ウクライナ大統領のウォロディミル・ゼレンスキーや、ソ連邦の最高指導者レオニード・ブレジネフなどがいます。

参考文献

伊東孝之, 井内敏夫, 中井和夫編　『ポーランド・ウクライナ・バルト史』 (世界各国史; 20) 山川出版社, 1998年
黒川祐次著　『物語ウクライナの歴史 : ヨーロッパ最後の大国』 中央公論新社, 2002年
* Історія міст і сіл Української РСР: Дніпропетровська область. Київ: УРЕ АН УРСР, 1971.

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