ドミニク・ド・ビルパン

ドミニク・ド・ビルパンの生涯と政治活動

ドミニク・ド・ビルパン（Dominique de Villepin）は、1953年11月14日にモロッコのラバトで生まれました。本名はドミニク=マリー=フランソワ=ルネ・ガルゾー・ド・ビルパン（Dominique Marie François René Galouzeau de Villepin）です。彼は、フランスの政治家、作家、外交官、弁護士として、その多才な才能を発揮しました。特に、ジャック・シラク政権下で第18代フランス首相を務めたことで広く知られています。

生い立ちと教育

ド・ビルパンの青少年期は、アフリカ、ニューヨーク、カラカスなど多岐にわたる場所で過ごしました。帰国後は、トゥールーズのイエズス会系私立リセに通い、バカロレアを取得。その後、パリ第10大学とパリ第2大学（パンテオン・アサス）で法学を専攻し、パリ政治学院を経て、1978年にフランス国立行政学院（ENA）に入学しました。1980年にENAを卒業後、フランス外務省に入省しました。

外交官としてのキャリア

外務省入省後、ワシントンやニューデリーでの勤務を経て、ド・ビルパンは保守派の有力政治家であったジャック・シラクの外交面での側近として頭角を現しました。1995年のシラクの大統領選挙勝利に貢献し、エリゼ宮（大統領府）官房長官に抜擢されました。1997年にはシラクに国民議会解散を強く進言しましたが、選挙では与党が大敗。辞表を提出するも、シラク大統領に慰留され、2002年まで官房長官を務めました。

外務大臣から首相へ

2002年には、ジャン＝ピエール・ラファラン内閣で外務大臣に就任。この時期、彼はイラク戦争開戦を強行しようとするアメリカに対して強く反対しました。アメリカのドナルド・ラムズフェルド国防長官から「（開戦反対の）フランスとドイツは古いヨーロッパだ」と皮肉られると、国際連合安全保障理事会で「フランスは古い国だからあえて反対する」と反論し、国際的な注目を集めました。この外交姿勢はド・ゴール主義に非常に近いと評され、イラク反戦の世界的な世論の高まりと相まって、ド・ビルパンはシラクの側近官僚という立場から、大統領候補としても注目されるようになりました。2004年からは、同じくラファラン内閣で内務大臣を務めました。

2005年5月31日、欧州憲法批准の国民投票で反対が半数を超えたことを受け、ラファランが首相を辞任したため、後任の首相に就任しました。しかし、首相としての任期は困難の連続でした。2005年のパリ郊外暴動事件では、暴動鎮圧を試みましたが、根本的な解決には至りませんでした。さらに、2006年には若年層の雇用促進を目的とした「初期雇用契約」(CPE)を強行制定しましたが、これが若者たちの反発を招き、フランス全土で大規模な抗議活動が発生しました。交通機関が麻痺するほどのストライキも発生し、社会全体が混乱に陥りました。当初、ド・ビルパンは妥協を拒否していましたが、最終的にシラク大統領がCPEの撤回を決定したため、ド・ビルパンは政治的なダメージを受けました。また、外相時代にニコラ・サルコジのスキャンダルを情報機関に探らせたのではないかという疑惑も浮上し、窮地に立たされました。

政治的失墜とその後

かつてはサルコジと並ぶ右派勢力の有力な後継者と目されていたド・ビルパンですが、首相在任中に二度の大規模な暴動を招いたことで支持を大きく失い、2006年4月には第五共和制下の首相として最低の支持率を記録しました。2007年の大統領選挙では立候補を断念し、サルコジへの支持を表明しました。

サルコジ政権発足後の2007年7月、「クリアストリーム事件」で起訴されました。2009年9月から始まった公判で、検察から執行猶予付き禁固1年6ヶ月と罰金4万5000ユーロを求刑されましたが、2010年1月28日に無罪判決が言い渡されました。2010年6月には、2012年の大統領選挙に向けて中道右派の新党「共和国連帯」を旗揚げしましたが、必要な推薦人を集めることができず、出馬を断念しました。

ナポレオンへの傾倒

ド・ビルパンは、ナポレオン・ボナパルトを深く尊敬しており、長編のナポレオン伝『百日天下あるいは犠牲の精神』を執筆しています。彼はナポレオンが完成させた官僚機構を高く評価しており、内務大臣に就任した際には、その象徴的な役職に就いたことを非常に喜んだとされています。この点からも、小さな政府を理想とするサルコジとは政治的な立場が大きく異なっていたことが伺えます。

家族

2006年10月には、長女のマリーがジバンシィの新作香水のオーディションを本名を隠して受け、採用されたことが話題になりました。ド・ビルパンは娘のモデル業に大反対しており、現在でも認めていないとされています。

ドミニク・ド・ビルパンは、その多才さと、時に強硬ともいえる政治姿勢で、フランス現代史に大きな足跡を残しました。

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