ドミニク・ボナ

ドミニク・ボナ：女性の生涯を描くフランスの作家

ドミニク・ボナ（Dominique Bona, 1953年7月29日 - ）は、フランスを代表する小説家、伝記作家であり、アカデミー・フランセーズ会員です。彼女は、特に女性の生涯に焦点を当てた作品を多く手がけており、その卓越した筆致で、歴史と女性の生き方を深く掘り下げています。

生い立ちと教育

1953年、南仏ペルピニャンで生まれたボナは、歴史学者で政治家の父、アルチュール・コントの影響を受けて育ちました。パリのソルボンヌ大学で文学の修士号を取得後、現代文学の教員資格を得ています。彼女の修士論文は「12～13世紀文学における妖精と魔女」であり、その後の執筆活動にも繋がる、女性の神秘的な側面への関心を示唆しています。

文筆活動

1981年に小説『盗まれた時間』で作家デビューを果たした後、1987年には最初の評伝『ロマン・ガリー』を発表。文芸評論家としても活躍し、複数の新聞や雑誌に記事を寄稿しています。ラジオ局の文学番組も担当するなど、幅広い分野で才能を発揮しています。

アカデミー・フランセーズ会員

2013年、ボナはアカデミー・フランセーズの会員に選出されました。これは、彼女の文学的功績がフランスを代表する知識人として認められたことを意味します。アカデミー・フランセーズの会員としては8人目の女性であり、その就任は、文学界における女性の地位向上を象徴する出来事として称えられました。

著書と作品の特徴

ボナの作品の特徴は、歴史的な背景を詳細に描きつつ、女性の感情や生き方を深く掘り下げている点にあります。彼女は、ベルト・モリゾ、カミーユ・クローデル、ガラ・エリュアールなど、歴史に埋もれがちだった女性たちの生涯を、小説のような魅力的な語り口で描き出しています。

代表作として、『黒い瞳のエロス―ベル・エポックの三姉妹』では、19世紀末のパリを舞台に、詩人ジョゼ＝マリア・ド・エレディアの三姉妹の人生を鮮やかに描き出しました。『ガラ―炎のエロス』では、画家のサルバドール・ダリの妻ガラを、その複雑な人間関係とともに描き、彼女がダリの創作活動に与えた影響を明らかにしました。また、『黒衣の女ベルト・モリゾ』では、印象派の画家ベルト・モリゾの生涯を、画家としての才能と女性としての葛藤の両面から描いています。

また、小説作品では、『ポール＝エベーヌの手記』で、18世紀のフランス植民地を舞台に、自由奔放な女性の生涯を歴史と絡めて描き出し、読者を魅了しました。

受賞歴と栄誉

ボナは、その優れた文学的業績により、数々の賞を受賞しています。主なものとして、アンテラリエ賞、地中海賞、ルノードー賞、ゴンクール伝記賞などが挙げられます。また、レジオンドヌール勲章オフィシエ、国家功労勲章オフィシエなど、フランス政府から多くの栄誉も授与されています。

おわりに

ドミニク・ボナは、歴史に埋もれた女性たちの生涯に光を当て、その複雑な感情と生き様を鮮やかに描き出すことで、多くの読者を魅了しています。彼女の作品は、歴史、芸術、そして女性の生き方に関心のある人々にとって、かけがえのない文学的財産と言えるでしょう。

主な著書

1981年: Les Heures volées (盗まれた時間) - 小説
1984年: Argentina (アルヘンティーナ) - 小説
1987年: Romain Gary (ロマン・ガリー) - 伝記
1989年: Les Yeux noirs ou les vies extraordinaires des sœurs Heredia - 伝記
1992年: Malika (マリカ) - 小説
1995年: Gala, la muse redoutable (ガラ、恐るべきミューズ) - 伝記
1996年: Stefan Zweig, l’ami blessé (シュテファン・ツヴァイク、傷ついた友) - 伝記
1998年: Le Manuscrit de Port-Ébène (ポール＝エベーヌの手記) - 小説
2000年: Berthe Morisot, le secret de la femme en noir (黒衣の女ベルト・モリゾ) - 伝記
2002年: Il n’y a qu’un amour (愛はひとつだけ) - 伝記
2004年: La Ville d’hiver (避寒地) - 小説
2006年: Camille et Paul, la Passion Claudel (カミーユとポール、クローデルの情熱) - 伝記
2010年: Clara Malraux, « Nous avons été deux » (クララ・マルロー、私たちは二人だった) - 伝記
2010年: Camille Claudel, la femme blessée (カミーユ・クローデル、傷ついた女) - 伝記
2012年: Deux sœurs. Yvonne et Christine Rouart, les muses de l’impressionnisme (二人の姉妹、イヴォンヌとクリスティーヌ・ルアール、印象派のミューズ) - 伝記
2014年: Les Rouart - De l'Impressionnisme au réalisme magique (ルアール家、印象派からマジックリアリズムへ) - 伝記
2014年: Je suis fou de toi. Le grand amour de Paul Valéry (君に夢中、ポール・ヴァレリーの大恋愛) - 伝記
2017年: Colette et les siennes (コレットと女友達) - 伝記
* 2019年: Mes vies secrètes (私の秘められた生活) - 回想録

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