ベルト・モリゾ

ベルト・モリゾ：印象派を彩った女性画家

ベルト・モリゾ（Berthe Morisot, 1841年1月14日 - 1895年3月2日）は、19世紀のフランスで活躍した印象派の画家です。エドゥアール・マネのモデルとしても知られ、その画風は、自然の緑を基調とした穏やかな色使いと、母子の愛情あふれる情景が特徴的です。男性中心の社会で女性画家として活動したモリゾの生涯と作品は、フェミニズム研究においても重要なテーマとなっています。

生い立ちと画業への道

モリゾは、ブールジュで県官吏の娘として生まれました。姉のエドマとともに画家を志し、ロココ時代の画家ジャン・オノレ・フラゴナールの血縁であるとされています。1850年代にはパリに移り住み、姉とともにバルビゾン派の画家ジャン＝バティスト・カミーユ・コローに師事しました。戸外での制作を通して、自然の光と色彩に対する感覚を磨いていきました。姉エドマは結婚と出産を機に画家としての道を断念しますが、モリゾはその後もエドマの精神的な支えを受けながら、画業に励みました。

マネとの出会いと印象派への参加

1864年、23歳でサロンに初入選を果たした後、モリゾはエドゥアール・マネと出会いました。マネに絵画を学びながら、彼のモデルも務め、二人の間には恋愛関係の噂も立ちました。モリゾはマネから大きな影響を受けた一方で、彼女の才能もまたマネに刺激を与えたと考えられています。また、モリゾはピエール＝オーギュスト・ルノワールやステファヌ・マラルメとも親交を深めました。

1874年、モリゾはマネの弟ウジェーヌ・マネと結婚し、同年、第1回印象派展に参加しました。彼女は印象派の画家たちとともに、伝統的なアカデミズム絵画からの脱却を目指し、新しい絵画表現を追求しました。モリゾの作品は、自然の光を捉えた明るい色彩と、筆致の軽やかさが特徴的で、その独特の画風は多くの人々を魅了しました。結婚後、モリゾは夫や娘を題材にした作品を多く描いています。

晩年と遺産

モリゾは1895年に54歳で亡くなりましたが、彼女の遺した作品は、その死後も多くの人々に愛され続けています。マラルメ、ルノワール、エドガー・ドガは、モリゾ夫妻の娘ジュリー・マネの後見人となり、ジュリー自身も画家として活躍しました。ジュリーが綴った日記には、当時の印象派の画家たちの日常が生き生きと描かれています。

モリゾの没後、彼女の功績を称える回顧展が開催され、マラルメがカタログの序文を寄稿しました。また、マラルメの弟子ポール・ヴァレリーは、モリゾに関する文章を執筆し、彼女の芸術を深く考察しました。

モリゾは、印象派の重要な画家の一人として、その独自の視点と感性で、19世紀の美術史に大きな足跡を残しました。彼女の作品は、現在でも世界中の美術館で展示され、多くの人々を魅了し続けています。

ギャラリー

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モリゾを描いた作品

映画「画家モリゾ、マネの描いた美女～名画に隠された秘密」（2012年）

参考文献

坂上桂子 『ベルト・モリゾ　ある女性画家の生きた近代』 小学館ヴィジュアル選書、2006年
坂上桂子編 『西洋絵画の巨匠6　モリゾ』 小学館、2006年
ドミニク・ボナ 『黒衣の女ベルト・モリゾ　1841－95』 持田明子訳、藤原書店、2006年
図録『ベルト・モリゾ展』- 2007年秋に損保ジャパン東郷青児美術館で開催
図録『パリ　マルモッタン美術館展』- 2004年冬に東京都美術館で開催
ジョン・リウォルド 『印象派の歴史』 三浦篤・坂上桂子訳、角川学芸出版、2004年／角川ソフィア文庫（上・下）、2019年
Denvir, B. (2000). The Chronicle of Impressionism: An Intimate Diary of the Lives and World of the Great Artists. London: Thames & Hudson.
バーナード・デンヴァー編『素顔の印象派』末永照和訳、美術出版社、1991年
バーナード・デンバー解説『印象派全史　巨匠たちの素顔と作品』池上忠治監訳、日本経済新聞出版社、1994年
Higonnet, Anne (1995). Berthe Morisot. Berkeley: University of California Press.

外部リンク

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